シルバーウイークを挟んだ二週間で,他の記事を押しのけて圧倒的に多くのアクセスを集めたのが,コラム「技術経営戦略考」の最新回「人をダメにするための技術」である。常々,現代の技術は人間を甘やかし過ぎると考えている筆者は,川口氏の意見にいたく共感。早速,氏が主張する「修練すること自体が目的」の道具とは何かを考えてみた。まず頭に浮かんだのが,「ドラえもん」の「くろうみそ」。なめればなめるほど苦労が増えるというあれである。それならば,実は自分も持っている。ほかならぬ,この原稿を書いているパソコンだ。使えば使うほどヘンになる。

 毎日出社してパソコンの電源を入れると試練が始まる。立ち上がったかと思えば突然画面が真っ暗になったり,マウス・カーソルが動かなくなってしまったり。どういう理屈か分からないが,日によって症状が違う。何度も立ち上げ直しているうちに,軽く10分は過ぎていく。今朝は一発で起動したと喜んでいたのだが,よく見るとWebブラウザーの表示が妙である。何故か「月」を表示できず,その代わりに「ニ」と出ている。日時を「9月21日(月)」と指定したつもりが,ブラウザーの表示は「9ニ21日(ニ)」。曜日の一覧を見ると「木」も表示できないようで,「(ニ),(火),(水),(ニ),(金)…」などとなっている。なるほど,これはチャレンジングだ。

 いやいや,何か違う。これでは自分が成長するどころか,不満が募るばかりではないか。そこで思い至ったのが,仕事で利用している,あるWebサイトである。このサイトがまた使いづらく,しかも反応が恐ろしく鈍いと来る。一つの作業をするのに,何度もメニューに戻って別のウインドウを開いたり閉じたりしなければならない。ところが最近思いついて,ある作業に必要な一連の画面を,ブラウザーで全てブックマークしてみた。そうしたら,あら不思議。ちょっとした工夫で作業が驚くほどスムーズになるではないか。何のことはない,「サイトの作り手がユーザーのことを考えていない」と嘆く前に,自分でやりやすいように配置し直せばよかったのである。

 つまり,こういうことではないか。メーカーが用意したごまんとある機能を,ユーザーが自分の目的に合わせて自在に組み合わせたり変更したりできるようにする。カスタマイズといったちっぽけな話ではなく,今まで存在しなかった自分だけの機器や環境ができてしまうくらいに。これは「修練」とは言えないかもしれないが,理想を追い求めていく姿勢は相通じるし,苦労の末に出来上がったときの達成感もある。日経エレクトロニクスが創刊1000号で取り上げていた「誰でもメーカー」とは,もしかしたらこのことでは。

 こうした機器やサービスの姿は,既に出来上がった部品を組み合わせ,作る過程を楽しみ,成果物に満足できるという意味で,プラモデル型とでも呼べばいいのだろうか。それだとあらかじめ設計図があることになるから,ちょっとニュアンスが違うかもしれない。第一,手先が不器用な自分は,プラモデルといえば部品から接着剤がはみ出したりして,最後まで奇麗に作れた試しがないではないか。どなたかいい名称はないでしょうか。

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