「権利者,メーカー,消費者の考え方がそれぞれ食い違った中で制度が成り立つかというと,それは違う」─。2009年5月12日,Blu-ray Disc録画機と媒体を私的録画補償金の対象にする,いわゆる「Blu-ray課金」を同月22日に施行すると閣議決定した後の記者会見で文部科学大臣の塩谷立氏はこのように述べた。肝心の「補償金制度」が立ち行かない現状を認めた。

 塩谷氏の発言は,デジタル放送専用のDVD録画機を発売している東芝とパナソニックが,補償金の徴収に協力できないと私的録画補償金管理協会(SARVH)に告げている問題に関連する。現行の著作権法では,デジタル録画機の購入者に私的録画補償金を支払う義務を定めており,DVD録画機はその対象機器になっている。また法律上は,家電メーカーが機器の価格に補償金相当額を上乗せして販売することで,補償金の徴収に協力する義務がある。

 今回,2社が協力を拒んだのは,問題のDVD録画機がいずれもデジタル放送専用機だからだ。メーカーは以前から,「コピー制御が施されたデジタル放送の録画に補償金制度の適用は不要」と主張して,権利者と対立してきた。消費者の中にはメーカーの意見に賛同する向きもあることから,2社は今回,「消費者の意思を無視して勝手に,機器の価格に補償金を上乗せして徴収することはできない」と主張し,徴収協力を拒んだ。

『日経エレクトロニクス』2009年6月1日号より一部掲載

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