今週は「CEATEC JAPAN 2009」。昨年来の不景気に台風の襲来もあって例年と比べ地味な印象でしたが,各社が披露した新技術・新製品の多さは,やはり他の追随を許しません。その中で筆者が注目していたのが「3Dテレビ」。会場で特に目立っていただけでなく,個人的に確かめたいことがあったからです。

 長い間,同じ業界の記者を務めていると,折に触れて口を衝いて出る決まり文句があります。「それって前にもあったよね」。どんなに目新しく見える製品や機能でも,根っこにある発想は過去に例があるものが少なくありません。とりわけそれが失敗したことを知っていればなおさらです。今回は前より速かったり小綺麗だったりするんだろうけど,本質が変わらなければ結果は似たり寄ったりだろうと,どうしても見てしまいます。実際,そう言って差し支えなさそうな機器やサービスはいくつかあります。例えば個人向けのテレビ電話はいまだに立ち上がったとは言い難いですし,ヘッド・マウント・ディスプレイも,ニコンの製品の登場で流れが変わるかもと思ったものの,吉報はまだのようです。

 私にとって,3Dテレビ――個人的には立体視テレビと呼びたいのですが――はそうした技術の一つです。だから,最近の盛り上がりに対して少し前にちょっと苦言を呈してみました。そしたら,読者のコメント(Annexへのログインが必要です)から,担当記者のブログまで,さんざん叩かれてしまいました。最新の技術やコンテンツを見ずして文句をつけるとはとは何事か,などなど。ならば最先端の成果をCEATECで目の当たりにして評価しようと,各社の3Dテレビのデモに足を運んだわけです。確かに,何度も失敗を繰り返したからといって,長い冬が終わらないわけではありません。あれだけ期待を裏切り続けた電子書籍が,米Amazon.com社のKindleの登場とともに離陸しつつあるのがいい例です。果たして新世代の3Dテレビは,新たな市場の扉を開くのか。

 その答は――読者の方々一人一人に,実物を見て判断していただきたいと思います。アニメーションやスポーツの映像を高々数分見ただけで,結論めいたことは言えないからです。ただ,筆者が事前の見方を覆されるほどの衝撃を受けなかったことは事実です。メガネが必要なこともさておき,平面を何層も重ねたような見栄えや,人工的な映像に起因する違和感は,完全には払拭されていなかった気がします。おまけに数分のデモが終わると,ドライアイ気味の目は,しょぼしょぼしてしまいました。

ニュース(10月5日~9日)