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「日本刀」 第6話 『創作ということの、本当の意味』

文:国分樹生=ライター,仲森 智博=編集委員 撮影:藤森 武
2009/09/24 15:00
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弟子たちによる炭切り。
弟子たちによる炭切り。

「失敗したら、弟子はえらい怒りよるで。普段えらそうなこと言うてるからなぁ」

 そう小声で語る河内國平(かわちくにひら)の視線の先には、細かな玉鋼が積み上げられた「てこ台」がある。城の石垣のミニチュアのように奇麗に積み上げられた状態を撮影するため、崩れ防止用に巻いた和紙をはがし、明るい場所に移動してもらっていたのだ。撮影が終わり、河内が和紙でもう1回くるむ。これが、なかなかに気の抜けない作業だ。パズルのような複雑さで積まれた鉄片の山を崩してしまったら、また1日がかりで最初から積み直すことになってしまう。もちろんそれをやるのは彼の弟子たちだ。

切った炭を選別する。
切った炭を選別する。

 当の弟子たちは、厳しい親方が自分たちのいないところで、こんなことを言っているとは夢にも思うまい。何しろ入門するときの条件が、「僕が烏の頭を白いと言っても、はいと言えること」というものなのだから。もちろん、「そんな気持ちで」ということで、親方がシロをクロと言わせてしまうようなことがあるわけではない。しかし親方の権力が絶大であることは、ちょっと鍛冶場にいるだけでも十分にわかる。

 日本刀に限らず多くの職人仕事の分野において、「あれこれ考えずに頭から親方に従う」ということが、正しく技を身に付けるうえで最も効率的な方法であるとされる。そもそも火を使った仕事に、言葉を尽くして説明などしている余裕はないし、それを聞いてあれこれ解釈している時間もあろうはずがない。だから、いいのかダメなのかを親方のかけ声一つで感じとり、それを是非もなく体に覚えさせるしかないのだ。つまり、弟子たちは親方に全身を委ねるのである。それだけに、親方の責任は重い。滅多なことでしくじる訳にはいかないのである。

師匠とほぼ同じ視点から仕事を見ることができる貴重な機会。弟子の目は真剣そのもの。
師匠とほぼ同じ視点から仕事を見ることができる貴重な機会。弟子の目は真剣そのもの。

 河内が独立してから今に至るまで、修業で金沢に行っていた時期を除いたほとんどの時期、彼の元には弟子たちがいた。今も2人が、弟子部屋で共同生活をしながら、休みは日曜日のみという修業の日々を送っている。

 周辺にコンビニエンスストア1軒ないような環境での修業は、相当にストイックなものなのだろう。実際、1週間で修業をやめた弟子もいるそうだ。しかし、宮入昭平(みやいりあきひら)の元で休みもないような日々を過ごし「40歳を過ぎるまで、きゅうりを巻いたすしを『かっぱ巻き』と呼ぶことも知らんかった」と言う河内からみれば、仕事を覚えるには適した環境だ。弟子の2人も娯楽も休みも極端に少ない環境を苦にしている様子はない。

 それだけ打ち込んでも、標準的な修業期間の5年では、とても刀匠の仕事は覚えきれるものではない。

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