中国の液晶テレビ市場での競争は熾烈を極めていることは知られている。わずかな期間であればこの市場で勝つことはあまり難しくないが,勝ち続けることは容易ではない。市場で勝ち組とされるメーカーがあれば,「なぜ勝てるのか」を分析したいところだ。一方,負け組とされるメーカーがあれば,「なぜ負けたのか」を見つけたい。この記事では,中国の液晶テレビ市場において,中国外のメーカーが2008年末にかけてなぜ負け組になったのか分析してみる。なお,以下では中国外メーカーを国際ブランド・メーカーと記す。

市場シェアは拡大から一転して低下へ

 国際ブランド・メーカーが中国の液晶テレビ市場を狙って力を入れ始めたのは,2005年末ごろである。最初に製品キャンペーンを行ったのはソニーであり,その後,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.が続いた。その効果もあって,ソニーやSamsungといった国際ブランド・メーカーの市場シェアは,2006年第3四半期に拡大するに至った。その後も拡大は続き,2008年第2四半期には国際ブランド・メーカーの中国液晶テレビ市場におけるシェアは60%にも達した。

 ただ,国際ブランド・メーカーにとって幸福な時間は長続きしなかった(図1)。2008年第3四半期から一転してシェアの低下が始まり,2009年第1四半期には金額ベースで15ポイントもの市場シェアを失ってしまう(台数ベースでは20ポイントのシェア低下)。なぜ,そのような短期間で国際ブランド・メーカーはシェアを失ってしまったのか。多くの見方は,原因は国際ブランド・メーカー自身にあり,中国ブランド・メーカーの低価格攻勢に敗れたため,とされる。本当にそうなのか。われわれが調査した限りでは,そうとは思えない。少なくとも,国際ブランド・メーカーにとって中国ブランド・メーカーとの価格競争はシェア低下のすべての理由であるというわけではない。

図1 中国液晶テレビ市場におけるシェアの推移(出典:GfK China)
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