日経ものづくり編集部からのお知らせ
本コラム著者の笠原隆氏は,2009年8月5日にお亡くなりになりました。本記事は,ご遺族の方の了解を得て掲載するものです。

 前回まで,技術者の皆さんに必要な「話し方」について解説してきました。この話し方と併行して磨いていただきたいのは「コミュニケーション能力」です。

同僚の悩みを理解していますか?

 多かれ少なかれ,人は悩みを抱えて生きています。職場において,皆さんの隣にいる人も悩みを抱えているかもしれません。しかし,職場のメンバーに悩みを打ち分けることにはためらいがあるものです。本音では同じ悩みを抱えている同僚と話し合いの場を持って解決したいと思っていても,実際に行動に移せないでいるのです。

 職場において,最初からお互いに心を開いて(オープンマインドで)話し合うのは難しいと思います。従って,段階を踏んで話し合いの機会を拡大していくとよいでしょう。ここで問われるのがコミュニケーション能力です。

飲食を共にする機会はありますか?

 技術者の皆さんにとって,共有する悩みを話し合って解決していくには,気楽に集まれる場が必要です。特に,飲食を共にすることが垣根を取り払う手段として有効です。職場のメンバーと普段から気軽に食事に行く,時には飲みにいくといった行動が「プラスの作用」として効いてきます。日本企業だけでなく,欧米やアジアの企業でも普段から気楽に話し会える場を手軽に設定することが求められているのです。ここでも普段の心構え,普段の努力が大きく影響してきます。

あなたから近づいていく

 それでは,このような場を実現するにはどうすればよいでしょうか。上司の都合に合わせて飲食の機会を設定していては,タイミングを逃してしまいます。「今がチャンス」という時に,自分から素早く行動に移しましょう。例えば「皆も忙しいと思うが,今日は私が悩んでいる課題の解決に手を貸してほしい」「皆のアイデアを聞かせてほしい」などなど,思い切って誘ってみるのです。当日というのが急ならば,「来週の水曜日の夕方にどうか」などと柔軟性を持たせてもよいでしょう。自分の悩みをメンバーに聞いてほしいときも,逆にメンバーの悩みの解決に協力したいと思ったときも,自分から近づくことがコミュニケーション能力を高めるための第一歩です。

コミュニケーションの基本とは…

 また,コミュニケーションの基本はあいさつ,笑顔,感謝の言葉(ありがとう)です。これらが,普段の生活の中で自然に出てくるようにしましょう。「朝,職場で会ったら笑顔であいさつをする」「人に物事を頼んだときには『ありがとう』を忘れない」。当然のことですが,忙しいときや悩んでいるときには忘れがちです。繰り返し意識して実行します。

 重要なポイントは,大げさなぐらいがよいということです。朝のあいさつや「ありがとう」は,普段より大きな声で実行してみましょう。