今週のコラム/解説/講座のランキングを見てください。アクセス数トップ10のうち半分を,連載「2代目プリウス向けIPAの開発」の記事が占めました。様々な製品の開発経緯を紹介する,日経エレクトロニクスの人気コラムから転載したものです。このコラムの皮切りは,1994年に掲載した「ファミコン開発物語」。1995年の「高輝度青色発光ダイオードの開発」から毎号掲載する連載記事になり,現在も「ドキュメンタリー」と名を変えて続いています注)

注)今後Tech-On!では,これまでの開発物語の中から選りすぐった記事を順次掲載していく予定です。来週月曜日からは,「カメラ付き携帯電話機の開発」が始まります。現在お読みいただける記事の一覧は,こちらをご覧下さい。

 かつてこのコラムを担当していた一人として,内情をちょっと明かしてみます。お察しの通り,この連載で取り上げるのはヒットしたり話題を呼んだりした製品ばかりです。ただし,劇的な出来事の有無で採用するネタが左右されることは,ほとんどありません。いくつもの話題を追っていると分かってくるのですが,どんな製品にも背後には間違いなくドラマがあるからです。開発の経緯を一幕の悲喜劇に変えるのは,製品化を阻む数々の難題です。たとえマイナーチェンジの製品だったとしても,それまで存在しなかったものを世に出す以上,想定外の問題や不測の事態は確実に起こるのです。マスコミの目に留まって記録に残るのは,そのうちのごく一部。世の中は,製品化とともに忘れ去られていく開発物語であふれているのです。

 日経エレクトロニクスが取り上げるのは,苦難を乗り越えて成功した製品がほとんどです。いくつもの事例を読んでいると,うまくいく開発には一定のパターンがあることに気づきます。言ってしまえば身も蓋もないのですが,難題を解決する一番の原動力は結局は技術者の熱意だと思います。実際,かつて実施したアンケートで「画期的な開発を成功させるために必要な要素」を日本の技術者に聞いたところ,一位になった選択肢は「技術者の熱意」でした

 もちろん,どんなに熱意があっても失敗するプロジェクトは後を絶ちません。人の記憶に過去を美化する機能があることも知っています。何でも精神論で片づけることは嫌いです。それでも筆者は,開発が成功する物語の結末まで来るたびに,やっぱり目頭が熱くなり,自分もまだまだ頑張ろうと思ってしまったりするのです。

ニュース(6月15日~19日)