トヨタ自動車が2003年9月に発売し,大ヒット中の2代目「プリウス」。
その装備として話題を呼んでいるのが,車庫入れや縦列駐車を支援する
「インテリジェントパーキングアシスト」(IPA)だ。
ステアリングを自動的に操舵するため運転者はブレーキ操作だけで所定の位置に駐車できる。
開発のキッカケは,プリウスの発売から7年もの歳月をさかのぼる1996年。
毎朝,テレビで放送されているある情報番組だった。
2代目プリウス向けIPAの開発
目次
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第10回:これで終わったわけじゃない
アイシン精機側でソフトウエアのバグ対策を指揮したのが,ITS技術部の斉木充義である。「本当に間に合うのだろうか…」。作業に取り組み始めた斉木は半信半疑だった。というのも,斉木は田中が苦労している姿をよく見掛けていたからである。その苦労ぶりを知っていたからこそ,かなりの危機感を持って臨んでいた。
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第9回:「今の仕事はすぐに中止だ」
経路補正のフィルタを用いることで,何とか駐車誤差の問題を解決したトヨタ自動車の開発チーム。ところが,量産化に向けて新たな問題が待ち受けていた。駐車支援システムのソフトウエアのバグがなくならないのだ。トヨタ自動車とアイシン精機のそれぞれが担当する開発個所が混在していたことが原因の1つだった。そして,追…
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第8回:田中君,倒れる
の時期,既にプリウスの量産仕様は決定しており,EPSのモータの出力値を変えるには,室長の許可なくして設計変更はできないのだ。そのため,まず駐車支援システムを統括する室長の決裁をもらう必要があった。里中と遠藤はすぐに室長の元を訪れる。
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第7回:量産仕様に誤りが
駐車誤差の問題を解決しようと必死に取り組むトヨタ自動車の開発チーム。2003年を迎えて事態はさらに深刻化する。製品企画グループによる評価は「商品性が全くない」だった。駐車支援システムの設定を終えるまで1分近くもかかるからだ。この設定時間を短くできなければ,商品化への道は閉ざされてしまう。新型「プリウ…
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第6回:「商品性が全くありません」
制御アルゴリズムに改良を加え続けてきた岩崎だが,2002年の終わりごろにはソフトウエア担当だった岩切にある事実を伝えた。「制御アルゴリズムの改良ですが,これ以上再計算させても効果は望めないところまで来ています」「そうですか…。分かりました。では制御アルゴリズムは,これでフィックスしましょう」「はい,…
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第5回:駐車誤差がなくならない
駐車支援システムの開発で先行する他社の存在を知ったトヨタ自動車の開発チーム。先を越されまいと「世界初」を信じて開発に邁進する。幸い,2003年に発売する予定の新型「プリウス」への搭載が決まる。2002年1月には同社の東富士研究所から里中久志と遠藤知彦が本社に移り製品化に向けて正式に動き始めた。
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第4回:クラウンに断られ
岩崎はまず実際の運転者がどのように駐車しているのかを探り始めた。やがて,運転者によってステアリングの回し方が大きく違うことに気付く。運転があまり上手ではない人は据え切りを多用しており,操舵トルクが大きいことが分かった。一方,駐車が上手な人は,クルマが動きだしてから一定の速さでステアリングをゆっくりと…
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第3回:見えぬ敵は青山にあり
2001年春にトヨタ自動車の東富士研究所で開催された役員向けの研究発表会。そこで,駐車支援システムは役員から高い評価を受ける。その3カ月後には担当役員から「製品化の1年前倒し」を宣告され,周囲からの期待は高まる一方。歓喜に沸いているはずの開発チームだが,実際には誰もが不安を募らせる。
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第2回:「1年前倒しで実用化せよ」
「ねえねえ岩崎君,一生懸命何やっているの?」試作車作りに取り組む岩崎に対する周囲の反応は思わしくなかった。「全自動の駐車システムなんですけど…。試作車を作ろうと思ってまして」「全自動の駐車システム? ふーん,大変そうだね。まあ俺には必要ないだろうけど」「……」
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第1回:「どうせやるなら全自動で」
トヨタ自動車が2003年9月に発売し,大ヒット中の2代目「プリウス」。その装備として話題を呼んでいるのが,車庫入れや縦列駐車を支援する「インテリジェントパーキングアシスト」(IPA)だ。 ステアリングを自動的に操舵するため運転者はブレーキ操作だけで所定の位置に駐車できる。