「えっ、あと10年もかかるの?」。「新産業」サイトのアクセスランキング(2014年6月16日~7月7日)の16位に入った記事「エプソンの碓井社長、『あこがれを持たれるウエアラブル端末こそを世に問う』」のネタ元になった記者会見に参加した時のこと。セイコーエプソン社長の碓井稔氏は、スマートグラスの新製品を披露しつつ、同社が究極的に目指すのは「眼鏡のように違和感なく身に付けられる製品」だと語りました。
そして、その実現にどれだけ時間がかかるのか、という会場からの問いに「あと10年かな」と答えたのです。5年くらいで何とかならないかなぁ、というのが率直な感想でしたが、それだけ同社の理想が高いということでもあるのでしょう。
ここにきて、さまざまなウエアラブル端末が登場しています。読者の皆様からの関心も高く、今回はエプソンの記事以外にもウエアラブル関連が3本ランクインしました。9位の「日本発、高級時計を意識したスマートウオッチ」、13位の「メガネからは人の状態がよく分かる―雰囲気メガネ開発者に聞く(前編)」、19位の「Google Glassは真のウエアラブルではない―雰囲気メガネ開発者に聞く(後編)」です。
究極のウエアラブル端末とはどのようなものか――。市場参入を狙う企業が、軒並み頭を悩ませている問いではないでしょうか。そしてこれと似たフェーズにあると感じられるのが、ロボットです。究極のロボットとはどのような姿をし、どのように行動するのか。その試行錯誤が続いています。
「擬人化できる個性を持っていて、名前を付けたくなる」。ランキング4位のインタビュー記事「擬人化できる個性を持つものがロボット、10年後には皆が使っていてもおかしくない」では、ユカイ工学 代表の青木俊介氏が、作りたいロボットをこのような言葉で表現しています。同氏が考える、究極のロボットの要件ととらえても良いでしょう。新産業サイトの前回のランキングで取り上げた「我が家にロボットが、ソフトバンクが約20万円で15年2月に販売」に登場するパーソナルロボット「Pepper」(関連記事)。その発表会でソフトバンクモバイル 代表取締役社長兼CEOの孫正義氏がPepperの特徴として強調したのも、人間のように「感情を理解できること」でした。
これらのロボットとは趣が異なりますが、生活支援ロボット(介護ロボット)も、国際安全規格「ISO13482」の発行により、普及への第一歩を踏み出しました。ランキング11位の「『医療機器学会』と『車』と『介護ロボット』に思う“サ工連携”の進捗」が指摘しているのは、ロボットというハードウエア(あるいはソフトウエア)技術と、その使い手であるサービス事業者(あるいは一般消費者)とのギャップを埋めることの重要性です。“究極の介護ロボット”の実現には、ハードやソフトを磨くだけでは不十分といえそうです。
“究極”にはなかなかたどりつけないからこそ、面白い。ウエアラブル端末やロボットの開発者(社)の声から伝わってくるのは、そんな思いです。こちらも少し気を長くして、待ちたいと思います。