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 先週末、新潟で開催された第89回医療機器学会に参加しました。そこで、意外な光景を目にしました。なんと、会場に3台の高級車が展示されていたのです。筆者はここ数年、医療機器学会に何度となく参加していますが、初めての光景でした。

 てっきり、医療従事者などを相手に高級車を売りつけようとする販売点の狙いかと思いきや、実は大会長である新潟大学医歯学総合病院 手術部・病院教授の堀田哲夫氏の意図によって、展示を決めたそうです。

 その意図とは「医療機器開発は自動車の開発のようになっていくべき」とのこと。例えば、自動車の開発者は自分も自動車を運転し、自動車のことを良く知って開発しているのに対して、医療機器の開発者は実際に医療現場で医療機器を使う機会がなく、一般には医療現場を十分に知り得ない立場にあります。つまり、車の展示を象徴的な事例として引き合いに出し、「もっと開発者と医療現場の距離が近くなるようにしていきたい」との気持ちの表れだというわけです。

 大会長講演では、「医療従事者はもっと高いモチベーションを持って、医療機器開発の進展に貢献すべき」など、医療現場を鼓舞する発言もありました。成長戦略である国内医療機器産業の活性化に向けて、医療現場側からもこうした発言が出てきていることは、大きな一歩だと言えそうです。

「サービスロボット」の社会実装に次の課題

 いわゆる「医工連携」という言葉で示される、医療サービスの担い手である医療現場・医療従事者と、そこに技術を提供する企業(大学/研究機関/技術者・研究者)の連携については、着々と進展してきた気がしています。連携を実現しようとするマッチングの場などの提供はあちらこちらで行われるようになり、冒頭の医療機器学会の大会長講演に象徴されるように医療現場のスタンスも変わりつつあります。

 一方、デジタルヘルス市場全体を見渡した場合、“病院の外側”へと広がっていく新たな医療の形において、そのサービスの担い手は、医療現場・医療従事者だけとは限りません。これまで社会の中のさまざまな分野でサービスを手掛けてきた事業者、例えば、住宅や食品、流通業者、フィットネスクラブ、金融・保険など、それぞれの領域で消費者と密接接点を持つサービス事業者が、その担い手になってきます。