企画の達人、久保田達也(くぼたつ)さんのところに、商品企画を相談に行った白金夕暮れ団の一行。川口盛之助団長を筆頭に、日経BP未来研究所 所長の仲森、そして記者の3人である。団長のカバンから出てきた多くの試作スイッチに驚きつつ、次第に前のめりになる企画の達人。アイデア会議は白熱し…。
売り方はこんな感じだと思うんだ…
「あのね、話しながらいろいろ考えたんだけどさ」
川口さんの試作スイッチをカチャカチャといじりながら続いていたアイデア会議。妄想スイッチから、スイッチ操作の習熟、五感に訴えるスイッチ、戦闘機のヴィンテージスイッチまで、手慰みスイッチの企画は発散する様相を呈していた。そんな時、くぼたつさんが、どうやら何かを思い付いたようである。
「今までの話を総合するとさ、やはりデジタルな方向じゃないと思うのよ」
「はあ」
「それで、売り方はこんな感じだと思うんだ」
「どんな、ですか」
くぼたつさんがアイデアを披露する。
「ここにある試作スイッチとか、ここで出てきたアイデアとか、全部並んでるのがいいんじゃない?」
「全部?」
「そう。だって、やっぱり触りたくなるじゃない。店の中にいろんな種類のスイッチが並んでたら」
「確かに。さっき、くぼたつさんのところのスタッフのみなさんも触ってましたね」
「でも、それってスイッチ専門店を開くってことですか」
「まあ、それもあるよね。たださ、別に店を開かなくても、どこかの店の棚を確保すればいいじゃない。実はね、だいぶ前にイギリスのシステム手帳を日本市場に導入したことがあるのよ…」
くぼたつさんは、かつてシステム手帳の先駆けとなるかなり有名な商品を日本市場に導入し、成功した経験がある。そのときには、手帳のバインダーやリフィル用の各種用紙などをずらりと並べて訴求した。これが、その後にシステム手帳の流行につながったのだという。そして、システム手帳を引き合いに出した理由はもう一つあった。