「擬人化できる個性を持っていて、名前を付けたくなるようなものをロボットと呼びたい」。手のひらサイズのソーシャルロボット「ココナッチ」などを開発したことで知られるユカイ工学 代表の青木俊介氏は、愛着がわくロボットをつくりたいと語る。青木氏に、ユカイ工学設立の経緯や、ロボットへの思いを聞いた。(聞き手は竹居智久=日経エレクトロニクス)

――「ロボティクスベンチャー」であるユカイ工学を設立した経緯を教えてください。

ユカイ工学 代表 青木俊介氏
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 僕は2001年に創業したチームラボで、2006年までCTO(最高技術責任者)を務めていました。主に検索エンジンの開発を担当していて、当時としては先進的なものだったのですが、あるもどかしさを感じていました。「どうがんばってもWebブラウザーや画面の外に出られない」と。

 画面の外のものに働きかけられるようになりたいと思って、環境を変えることを決めました。まず、中国の大学院に行きました。2006年6月からですね。

――なぜ中国の大学院だったのでしょうか。

 直接の理由は、僕が学部生のときに同じ研究室にいた先輩の縁です。「ロボットをつくりたい」という思いから、その先輩が先生をやっていた上海東華大学のニューラルネットワークの研究室に行きました。

 当時は「シリコンバレーであれば何でも素晴らしい」みたいな礼賛の雰囲気があったんですよね。だから米国じゃないところを選んだというのも少しあります。北京オリンピック(2008年)や上海万博(2010年)を前にして中国が劇的に変化している時期だったので、とても良い経験をしました。

――チームラボに所属したままでもロボットを手掛けられたのではないですか。

 たぶんできたと思います。でも、その時は環境を変えたいというのが大きかったですね。

 その大学院に籍を置いたまま、2007年の終わりにユカイ工学を設立しました。チームラボ時代に、アルバイトで参加していた学生と「ロボット面白いよね」と話していたんですよね。ロボット系の研究室に進んでいたその学生と一緒に立ち上げることにしました。