今回の記事で個人的に感服したのが,「折れず曲がらず良く切れる」という相矛盾する特性を高い水準で並立させる技です。普通なら共存しない性質の間に折り合いを付ける方法を見いだすところに,日本ならではのきめ細やかさを感じるのは,やっぱりひいき目でしょうか。いずれにしても今後は,矛盾する要素の間に解決への隘路を見つける技術力がものをいうことは確実に思えます。「多機能なのに低価格」「高性能なのに環境に優しい」などなど,市場からの要求は理不尽さを増すばかりだからです。先人から受け継いだ,不可能を可能にする「日本力」に期待したいところです。
一方で,日本刀のありようを見ていると,一抹の不安もよぎります。ある刀匠は,『名刀とは「それを見ただけで争いの愚かさを悟らせ、お互いに刀をおさめようという気持ちにさせるもの」』と語ったといいます。これを卑近な言葉に翻訳すると,道具の本分を超越した「過剰品質」と言えなくもありません。時として芸術の域に達するほど品質を突き詰めてしまうのも,日本のものづくりの良く指摘される側面です。武器を武器として使う必要がなく,芸術品としてのみ存在するような世の中になればいいのですが。
ニュース(8月10日~21日)
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