三菱電機は,砂塵やほこり,油などさまざまな汚れを付着しにくくした防汚コーティング「ハイブリッドナノコーティング」を開発した。親水性汚れにも疎水性汚れにも対応できるコーティング技術は「世界で初めて」(同社)という。加えて,コーティング基材も金属からプラスチックまで適用可能。汚れの付着による性能低下が抑制できる上,掃除やメンテナンスが容易になる。

 同コーティングは,無色透明な親水性材料の薄膜に,疎水性のフッ素樹脂の微粒子を均一分散したもの。同微粒子の大きさは数十nmと汚れより小さいため,汚れが付着したときにはコーティング膜の親水性部分と疎水性部分の両方に触れることになる。このため安定した付着状態とはならず,水をかけたり揺らしたりするだけで簡単に剥離する。さらに,表面の親水性材料が静電気を除去することにより,帯電による汚れの付着も抑制できる。

 同コーティングは水系。従って,表面が疎水性のプラスチックにはなじみにくいが,今回「密着性強化技術」を新たに開発しこの問題を解決した。具体的には,「密着性強化添加剤」を加えることで,コーティング膜と基材(プラスチック)との密着力を高めている。この添加剤は,コーティング膜生成後に消失するという。こうした工夫により,汚れの付着量は従来のコーティングの1/10に低減できる。加えて耐久性も高く,長期にわたって防汚性を維持できるという。

 汚れは,家庭用電気製品から産業用機器に至るまであらゆるものに付着し,見た目のきれいさを損なうだけでなく,メンテナンスを怠れば雑菌の繁殖や性能低下の原因になる。その汚れには水になじみやすい親水性汚れと,なじみにくい疎水性汚れがあるが,従来の防汚コーティングはどちらか一方に対応するだけだった。