EDA業界の大御所の一人であるJim(James) Hogan氏に,今後の半導体業界やLSI設計,EDA(electronic design automation)について聞いた。同氏は米Cadence Design Systems, Inc.のSenior Vice Presidentや日本ケイデンス・デザイン・システムズのPresident,米Artisan Components, Inc.のSenior Vice Presidentなどを歴任。現在は,ベンチャー・キャピタリストなどとして活躍中である。同氏は,真っ直ぐな多結晶Siなどの構造的レイアウトのスタンダード・セルを開発する米Tela Innovations Inc.の創業者の一人。
日本では,米Intel Corp.の組み込み分野への進出が話題になっている(Tech-On!関連記事1)。同社は本気だろうか。
当然本気だ。IntelはサーバーやパソコンなどのIT分野をまず制覇した。次は,同社がMID(Mobile Internet Device)などと呼ぶモバイル機器を狙うだろう。そして,米Wind River Systems Inc.を買収したことからも分かるように,その次は,あるいはMIDなどと同時に組み込み機器の分野を攻めるだろう。
モバイル機器や組み込み機器では,英ARM Ltd.の勢力が強いが(Tech-On!関連記事2),Intelの強みはどこか。
Intelのプロセサでは米Microsoft Corp.のビジネス・アプリケーションがスムーズに稼働する。小型・低消費電力がウリモノのARMのプロセサでは処理能力の点で,それは無理だろう。
IntelがMIDや組み込み機器まで入ってくると,他の半導体メーカーは生き残れるのか。
メモリを除くと,大手のIDM(integrated device manufacturer)は世界でIntelの1社だけになることもあり得るだろう。その時代には,米QUALCOMM, Inc.は通信関係のIPプロバイダ,米Texas Instruments, Inc.はDSPコアのプロバイダ,あとはシステム/機器メーカーがSoCを開発する。こうしたシステム/機器メーカーとしては,韓国Samsung Electronics Co., Ltd.と日本の民生機器メーカーがあるだろう。ただし,SamsungのSoCが世界で通用する一方で,日本のSoCはほとんど日本でしか使われない可能性がある。