今,TFT技術は熾烈な開発競争を迎えている。特に次世代有機ELディスプレイ用のTFT開発は,戦国時代と言ってもいいくらいの様相である。その理由は,現在有機ELで広く用いられている低温多結晶Si(LTPS)TFTは第4世代(G4)までしか量産装置が無く,今後パソコン用やテレビ用へのニーズに対応できないからである。一方,液晶ディスプレイで広く用いられているアモルファスSi(a-Si)TFTはしきい電圧(Vth)がシフトしてしまうため,電圧を電流に変換して駆動する有機EL用の画素にはそのままでは使えない。そこで,LTPSと同等の信頼性を持ち,大型基板に対応できる次世代TFTが渇望されているのである。

表1 有機ELディスプレイ駆動用TFTの比較
表中の◎○△×は,各技術の現在の完成度を著者が示したものであり,各技術のポテンシャルを示したものではない。
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 表1は,これまでに有機ELパネルの試作に採用された主なTFT技術を比較したものである。このうちLTPS,SPC,SGS,SLSなどは,本来は多結晶Siとしてまとめても良いのだが,製造方法によって特徴が大きく異なるため,この表では分けて示してある。また,酸化物TFTにも様々な素子があるが,ここでは実際パネルの試作に広く利用されているアモルファスInGaZnO(以下IGZOと略記)を代表例として挙げてある。なお,これ以外にも有機TFTで有機ELパネルを試作した例があるが,まだ量産を議論する段階にはないと思うので,この表からは外してある。