今週,個人的に気になったのはGoogle社の日本法人が日本語入力ソフトを開発したというニュースです。つい先日,Tech-On!のGoogle特集ページにマイナーチェンジを施したのですが,その作業を通じて同社が影響力を持つ領域の広さに改めて驚かされたものの,まさかこんなところまで触手を伸ばしてくるとは思いませんでした。ただし,「Google社の信念」についての記事を読んで,少し考えが変わりました。ひょっとしたら,こうした未来が訪れることを,自分は薄々知っていたのではなかったかと。

 記事によればGoogle社の信念とは,「Everything was Offline is now Online」「Living in the Cloud」などだそうです。「Cloud」などと書かれると,いかにも最近の流行に乗じた発言に聞こえますが,一昔前の言葉に置き換えるとネットの「向こう側」に様々な機能が移行するという話で,決して目新しい主張ではありません。日経エレクトロニクスが2006年に掲載した記事には,2010年以降の世界を想定して,「機器の機能は恐らくネットワークの『向こう側』に置かれる。こちら側には,ユーザー・インタフェースとネットワークの接続機能ぐらいしか残らない」と書いてあります。その予想が現実に近づいたということでしょう。くだんの日本語入力ソフトの特徴は,「Webにある大量のデータから統計的な言語モデルを構築することで高い変換精度を実現」したこととか。簡単に言えば,ちょっと前に一世を風靡した「Web 2.0」の考え方を,変換ソフトに応用したということでは。

 不思議なのは,こうした将来が来ると予見できたにも関わらず,Google社に一矢を報いるような,国内の大手企業がないことです。それどころか,垂直統合体制や総花的な事業領域を見直さないと行き詰まるとの予測通りに,苦しい舵取りを続けるメーカーは少なくありません。恐らく,これは仕方のないことなのでしょう。日本には,Google社の背後にあるシリコンバレー流の企業文化や金融の仕組みなどは整っていませんし,長年染みついた各社の体質を一朝一夕に変えることは極めて困難だからです。だとすれば,日本の電子産業の逆境はまだまだ続くでしょうし,ひょっとするとさらに厳しい時代が訪れるのかもしれません。

 問題は,冬が続く間に何をするかです。米国の産業界は,日本企業に押しまくられた1980年代に,シリコンバレーが代表する新しい産業構造を生み出しました。欧米だけでなく新興国もますます強くなる時代に備え,新しい日本の姿を探すのが今なのです。

ニュース(11月30日~12月4日)