予算仕分けにおいて「次世代スパコン・プロジェクトの来年度の予算計上は、見送りに限りなく近い縮減」という評価が下され、そのことが大きな議論を呼んだ(関連記事)。それを受け菅科学技術担当大臣は、スパコンを含む科学技術政策の事業仕分け調査評価結果について見直すと発言した。

出典:内閣府Webサイト

 11月23日付読売新聞朝刊の1面トップ記事には、『スパコン「凍結」せず…菅戦略相、仕分け見直し』『菅副総理・国家戦略相は22日、政府の行政刷新会議(議長・鳩山首相)の「事業仕分け」で「事実上の凍結」とされた次世代スーパーコンピューター(スパコン)開発予算について、判定を見直す考えを表明した』とある。

 先週、菅大臣と会う機会があったが、その時にこの件について議論した。菅大臣のところにもこの評価結果については色々と意見が来ているとのことだったので、こうした意見を踏まえて考慮し、この発言になったのだと思う。

分かれた意見

 スパコンについては、大きくは「スパコンなしで科学技術創造立国はありえない」という意見と「スパコンにこれだけの予算を使う必要が本当にあるのか」という意見に分かれている。個人的には「スパコンは科学技術を進める基盤」だとは思うが、それに1000億円もの税金を使うということについては、疑問がないわけではない。

 まだ細かい予算の執行額と要求資料を見ていないが、建物に大きな金額をかけていることは間違いないだろう。さらに、NECや日立製作所が離脱したという事実もある。プロジェクトマネジメント上に何らかの問題があったと考えるのが自然だろう。

 私のところにも、科学者や研究者の方々からの意見が多く寄せられている。だが、一部をのぞきスパコン・ユーザに当たる方からのご意見は多くない。つまり、作り手側に近い方からはかなりの熱意を感じるが、使い手側の方があまり関心をもっておられないのではないかと思うのである。このことから考えれば、「利用面の配慮が足りない」という指摘は、あながち的外れではないのかもしれない。

スパコンは戦艦大和か?

 かといって、スパコンプロジェクト自体を否定しているわけではない。例えば、池田信夫教授の様々な議論の中で「スパコンは戦艦大和」と批判されておられた。指摘されている点に共感できる部分もあるが、「だから不要」とは私は思わない。

 スパコン・プロジェクト反対派の論点は、

(1)スパコンの性能世界一を目指す意味があるか、実現できるか?
(2)スパコンは道具であり、国産「日の丸コンピュータ」である必要があるのか?ハードは海外から購入し、ソフト開発に力を入れるべきではないか?

ということのようだ。その2点について、まずは考えてみたい。