京セラが,auブランドの2009年冬モデルとして開発した携帯電話機「SA001」。この端末は,最薄部の厚さが11.9mm(最厚部は約14.7mm)と薄い(図1)。ワンセグ視聴機能を備えたスライド方式の端末として「世界最薄」注1)をうたう(Tech-On!関連記事)。SA001の開発の狙いや実現技術について,京セラ 通信機器関連事業本部 移動体通信機器第二統括事業部 移動体第2技術部 プロジェクト推進部 プロジェクト課 副責任者の大澤宣昭氏と,同 移動体通信機器第一統括事業部 マーケティング部 国内企画部 国内企画1課の田中宏幸氏に聞いた。

図1 最薄11.9mmのスライド式端末「SA001」(京セラ製)。ブルー,ピンク,ブラック,ホワイトの4色展開。ターゲット層は10~20代の女性だが,男性向けにブラックを用意したという。(写真:京セラ)

注1)2009年8月31日時点。メディアインタラクティブの調査による。

とにかく薄型にこだわった

 SA001の企画・開発は,「とにかく薄さにこだわって進めた」(田中氏)という。これまでは,NTTドコモの2008年冬モデルの携帯電話機「N-04A」(NEC製)が,ワンセグ対応のスライド開閉方式で最薄部の厚さが12.9mm(最厚部は約14.6mm)だった。今回のSA001では,N-04Aに比べて最薄部を1mm薄型化したことになる(図2)。

図2 SA001と「W61SA」(最厚部18.4mm)を並べたところ。
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 加えてSA001は,京セラが企画段階から開発を手掛けた初のSAブランド(三洋電機の携帯電話機部門が使用していたブランド名)端末である。これは,2007年10月に三洋電機の携帯電話機事業を買収してから初となる。京セラはこれまで,2008年夏モデルとしてSAブランドの端末を2機種(「W63SA」と「W64SA」),市場に投入しているが,「これらは旧三洋電機の携帯電話機部門が企画・開発を手掛けていた」(田中氏)ものだ。

 今回,SAブランドの端末を一から開発する際に,「京セラと旧三洋電機それぞれの携帯電話機部門の強みを発揮したいと考えた」(田中氏)という。京セラの強みとして,薄型端末の開発を手掛けてきたことを挙げる。例えば,KDDI向けの2009年夏モデルでは,折り畳み式で最薄10.9mm(最厚部は約13.5mm)の「K002」を開発済みである。一方,旧三洋電機の強みとして,スライド式端末の開発力を挙げる。「W61SA」や「W54SA」など,「スライド式端末を数多く手掛けた実績と開発のノウハウがある」(田中氏)という。

SAユーザーの要望に応えた

図3「簡単ケータイ K003」(発表会で披露した端末)。
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 とはいえ開発時には,「K(京セラ)とSA,どちらのブランドを冠するか,社内で議論があった」(田中氏)という。最終的な決め手となったのは,以下の二つの理由による。一つは,“SAブランド=スライド式ケータイ”というイメージがユーザーに定着していること。もう一つが,「現行のSAユーザーから,『後継端末を出して欲しい』という要望が大きかったため」(田中氏)という。

 京セラは今後も,「KとSA,二つのブランドでの端末提供を続けていく予定」(田中氏)だ。それぞれのブランドの位置付けとしては,Kブランドが使いやすさ,SAブランドが高機能やスライド式で棲み分けていく。実際,2009年冬モデルでは薄型スライド式端末のSA001はSAブランド,「簡単ケータイ K003」はKブランドで発表している(図3)。