「電子機器の筐体では,携帯型端末のような薄型品を除けば,ほぼすべての製品に適用可能」「直射日光が当たる部位は厳しいが,それ以外の自動車内装用の射出成形品に必要な耐熱性は確保した」「最高レベルの難燃性が要求される複合機の筐体でも使える」――。生物資源を主原料とするバイオマス・プラスチック(バイオプラ)の開発や特性改善が急速に進んでいる。その適用先は,従来は困難とされていた領域へとどんどん広がり始めた。しかも,ポリエチレンやポリアミドなどのバイオプラ版も登場。実力も層の厚みも増したバイオプラが,今か今かと出番を待っている。最大の課題は価格。だが,原油価格が乱高下しながら上昇基調をたどる中,今後低価格化していくバイオプラが石油系プラスチックを価格性能比で追い越す可能性は高い。最前線の取り組みを紹介する。
連載
バイオプラスチック最前線
目次
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第6回:ケナフの射出成形でPP代替を目指すトヨタ紡織
トヨタ紡織は,アオイ科フヨウ属の植物であるケナフを射出成形して自動車の内装部品を造る技術の開発に取り組んでいる。目指すのは,ポリプロピレン(PP)の代替だ。
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第5回:シャンプー容器を1年以内に「バイオプラ化」する資生堂
資生堂は,ポリエチレン(PE)製のシャンプー容器について2011年以降に石油由来からバイオマス由来への転換を開始し,導入から1年以内に全量を置き換える予定だ。その際のバイオPE使用量は年間4000t程度に達するという。
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第4回:自動車の内装部品に使える耐熱性を実現したマツダ
非常に高い耐熱性が要求される自動車において,内装用の射出成形部品に適用可能なポリ乳酸(PLA)を開発したのが,マツダを中心とする広島県内のグループである。マツダは,この技術を活用した部品を,水素ロータリエンジンとモータを組み合わせて走るハイブリッド車「プレマシーハイドロジェンREハイブリッド」に搭…
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第3回:ノートパソコンの筐体で耐熱性と難燃性を両立させた富士通
富士通は,ノートパソコンの筐体においてバイオプラの採用を進めている。ノートPCの筐体では,耐熱性と難燃性の両方を確保する必要がある。素材を分子レベルで見直すことにより,この両立を達成した。
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第2回:複合機向けに最高レベルの難燃性を実現したキヤノン
高度な機械的特性が求められる複合機の外装部品で,積極的にバイオプラの採用を進めているのがキヤノンだ。バイオプラ自体は,同社と東レの共同開発品。最高レベルの難燃性を実現したのが特徴である。
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第1回:今,なぜバイオプラなのか
生物資源を主原料とするバイオマス・プラスチック(バイオプラ)の採用が進んでいる。これまで,カーボン・ニュートラルや生分解性といった側面が強調されてきたバイオプラ。だが,これら二つとは別に,バイオプラにはもう一つ重要な利点および使命がある。それは,極端な石油依存を軽減し得るということであり,そうして…