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日経エレクトロニクス雑誌ブログ

「CELL REGZA」の驚きと疑問

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2009/10/09 09:37
佐伯 真也=日経エレクトロニクス

 2009年10月6〜10日に幕張メッセで開催中の「CEATEC JAPAN 2009」。今回のCEATECで注目を集めたAV機器の一つは,東芝が発表した55型の液晶テレビ「CELL レグザ(REGZA) 55X1」でしょう(Tech-On!の関連記事1)。同社とソニー,米IBM Corp.と共同開発したマイクロプロセサ「Cell Broadband Engine(以下Cell)」を搭載しており,東芝 デジタルメディアネットワーク社 社長の大角正明氏が,「テレビの概念を変える」と意気込む製品です。

 “東芝渾身の一作”とも言えるCELL レグザに関しては,いくつかの驚きがあります。まず一つが,CEATECにおける東芝ブースの展示です。例年,同社のブースは「デジタルネットワークステージ」と「電子部品・デバイス&装置ステージ」の二つに分かれていました。前者は液晶テレビやDVDレコーダーを始めとするAV機器,後者は半導体や電子部品の展示用です。開催前に会場図を確認すると,同社のブースはデジタルネットワークステージに大小2カ所のブースがあるのみ(会場図はこちら)。「大きい方のブースでAV機器を,小さい方のブースで部品を展示するのか」と考えていたのですが,そうではありません。前者のブースはCELL レグザの展示のみで,後者のブースはモバイル機器に関する展示が中心。2009年9月16日に発表されたばかりの液晶テレビ「REGZA」の新シリーズの展示もありません(Tech-On!の関連記事2)。それだけでも,CELL レグザに対する同社の意気込みが伺えます。

 もちろん,驚きは展示会場だけではありません。搭載する液晶パネルの表示性能は,ピーク輝度は1250cd/m2,映像表示時のコントラスト比は500万対1と高い。この表示性能を実現するために,白色LEDを光源に用いた直下型バックライトの部分制御を従来品の5倍以上となる512領域に拡大したほか,領域内の複数の白色LEDをすべて最大の輝度となるように発光するなどの仕組みを導入しています。「もうこれ以上キレイなディスプレイは必要ない」という意見はあるでしょうが,技術者としては少しでも高画質化を図りたいもの(筆者は一応,2年半前まで液晶技術者)。単に展示会へ出展するだけでなく,製品化できたことは,“技術者冥利に尽きる”と言えそうです。

 パネルに関してはさらに,「コストを意識せずに開発すれば,どのパネル・メーカーにも実現可能」という指摘もあるでしょう。しかし,不況下にも関わらず,製品化を実現した東芝には驚きです。しかも,同社は社会インフラ事業や環境・エネルギー・バイタル・ヘルスケア分野への対応強化を表明している(Tech-On!の関連記事3)ほか,テレビ事業に関しても新興国向けのコモディティ製品の開発を進めると表明しているだけに(Tech-On!の関連記事4),なおさらです。

いくつかの疑問を聞いてみる

 このほか,地上デジタル放送の8番組同時録画機能など機能面での驚きは挙げればまだありますが,CELL レグザについては疑問がいくつかあります。

 その一つが価格です。発表会で発表された市場想定価格は100万円。この価格について,編集部内では「高過ぎるのでは」という意見が多くありました。2009年9月に発表された「ZX9000シリーズ」の55型品は市場想定価格が60万円。55型の液晶パネル(バックライトを除く)や3TバイトのHDD,14個にも及ぶチューナーがそこまで高価だとは考えにくい。Cellについても,同様に45nm版を搭載する「プレイステーション 3」の価格が2万9980円であることを考えると(Tech-On!の関連記事5),コストに占める割合は低そうです。実際,発表会での説明では,「現行レグザの上位モデルから4割程度高い値付けをした」(東芝の大角氏)と説明しています。あくまで,同社のテレビにおけるフラッグシップ・モデルとして設定された価格と言えそうです。

 価格について,実際のところどうなのか,東芝ブースで同社 デジタルメディアネットワーク社映像マーケティング事業部 映像グローバルマーケティング部 参事の本村裕史氏に質問してみると,まず「LEDバックライトは高い」との回答があります。先に述べたように,CELL レグザのLEDバックライトは512領域にそれぞれ複数個の白色LEDを搭載しています。1領域が2個なら1024個,4個なら2048個になります。昨年のCEATECで発表されたシャープの「AQUOS XS」シリーズでは,RGGB4個のLEDを一つのユニットとし,1000以上の領域に分けています(Tech-On!の関連記事6)。52型品の発表当時の市場想定価格は98万円,昨日「価格.com」で調べると最安値が64万9800円でした。CELL レグザでも,ある程度のコストを占めるのは間違いないでしょう。

 さらには,「筐体やスピーカーも高いです」(本村氏)と続きます。これら筐体は表示部とチューナー部ともにAl製ですから,当然かもしれません。このほか,「数年間にも及ぶ開発費をどこまで盛り込むのか」(同氏)とも。ただし,機能を絞り込むなどすれば,「コストダウンの余地はまだまだある」(同氏)としていました。

 続いての疑問が,「なぜ光ディスク装置を搭載しないのか」です。東芝は,2009年8月にBlu-ray Disc Association(BDA)に加入したほか,2009年9月にドイツで開催された「IFA 2009」で,ついにBlu-ray Disc(BD)プレーヤーを発表しています。個人的には国内では「CELL レグザで解禁か」と考えていました。Al製の筐体など,デザインを重視しているだけに,隣に他社のBD対応機を並べるのは抵抗がなかったのかも気になります。

 この点については,「BD対応機を内蔵して,Al製のチューナー部から光ディスクが出てくる姿はデザイン的に美しいだろう」(本村氏)としています。ただし,「BDは東芝として導入し始めたばかり。国内での投入については何も言えない」(同)と述べるにとどまっていました。

 最後の疑問が,「CELL レグザ」という製品名です。「日経エレクトロニクス」や「Tech-On!」の読者である技術者にとって,Cellは有名ですが,一般ユーザーには意味が分からない気がします。製品化時には複数の候補があったのかが気になります。

 これについて本村氏は,「始めから CELL レグザ以外は考えたことがない」と言い切ります。もっとも,「CELL レグザの想定ユーザーは映像マニアやAV機器マニア」(同氏)ということを考えると,Cellを知らない訳がないのでしょう。

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