テレビへの伝送デモ。下に置かれた送電デバイスから,テレビのすぐ下にある受電デバイスまでワイヤレスで電力を伝送している。テレビはソニーの22型「KDL-22J5」を利用。一般の放送も受信できるが,写真では著作権保護のため,映像はテストパターンになっている。
テレビへの伝送デモ。下に置かれた送電デバイスから,テレビのすぐ下にある受電デバイスまでワイヤレスで電力を伝送している。テレビはソニーの22型「KDL-22J5」を利用。一般の放送も受信できるが,写真では著作権保護のため,映像はテストパターンになっている。
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 ソニーは,電源コードなしでテレビなど電子機器に給電できる「ワイヤレス給電システム」を開発した(発表資料)。60Wの電力を50cm離れたテレビに伝送するシステムとして試作した。ソニーがワイヤレス給電システムの開発を明らかにするのは今回が初めて。

 給電方式は米Massachusetts Institute of Technology(MIT)が2006年に提案した「磁界共鳴方式」に基づく。ただし,今回ソニーは,ワイヤレスで伝送できる距離を伸ばす技術「レピータデバイス」を独自開発している。

 開発したシステムは,共鳴用送受電デバイス間の距離を50cmにした場合に約60Wの電力を伝送できる。この場合の送受電デバイス間の伝送効率は約80%。整流回路を含んだ場合で約60%だという。送受電デバイスの寸法は,格納している箱が40cm×40cm(高さは数cm)。同社はその箱の中身を明らかにしていないが,MITや米Intel Corp.が開発したシステムと同様なコイルが使われているもようだ。

 レピータデバイスは電源を持たない受動部品で,送受電デバイス間に設置して磁界の共鳴を中継する。これによって50cmだった伝送距離を80cmにしても,送受電デバイス間の伝送効率を80%に保てるという。

 実演では,テレビの駆動のほかに,レピータデバイスの動作,直径4~5cmの受電デバイスを搭載した玩具の車,そして光ファイバ製の装飾用灯りに給電するデモなどを公開した。

 実用化時期はまだ未定というが,「テレビに限らず,幅広い民生品に応用していきたい」(同社)とする。

テレビの背面の様子。テレビは製品をそのまま用い,整流回路,マッチング回路,DC-DCコンバータなどの回路をまとめて箱に入れてテレビの背面に付けた。テレビの電源コンセントはこの箱に差し込まれている。
テレビの背面の様子。テレビは製品をそのまま用い,整流回路,マッチング回路,DC-DCコンバータなどの回路をまとめて箱に入れてテレビの背面に付けた。テレビの電源コンセントはこの箱に差し込まれている。
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レピータデバイスのデモ。送電および受電デバイスの間に設置すると,磁界が中継されて電球が点灯する。
レピータデバイスのデモ。送電および受電デバイスの間に設置すると,磁界が中継されて電球が点灯する。
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レピータデバイスを取り去ると,80cmの距離では伝送効率が低下し,電球はほとんど点灯しなくなる。
レピータデバイスを取り去ると,80cmの距離では伝送効率が低下し,電球はほとんど点灯しなくなる。
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玩具の車や装飾用灯りを動作させるデモ。一つの送電デバイスから,複数の受電デバイスに向けて電力を伝送できる。
玩具の車や装飾用灯りを動作させるデモ。一つの送電デバイスから,複数の受電デバイスに向けて電力を伝送できる。
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