2010年最初のランキングで,読者が最も「参考になった」と評価した記事はNEブログ「Acer社はもうパソコン“メーカー”ではありません」でした。ノート・パソコン世界首位の座を伺うAcer社は,「メーカー」というより「商社」のようだと指摘した記事です。

 随分古い話になりますが,筆者は「パソコン・メーカーは商社になる」という見方を紹介したことがあります。日経エレクトロニクスの1995年10月25日号の特集記事で,「商社と化す日本メーカー,ノート・パソコンに望み」と題した囲み記事を載せました。DOS/V機の市場が広がるにつれて,国内メーカーが設計や製造を海外メーカーに委託せざるを得なくなっている状況を描いたものです。当時,高性能ノート・パソコンの設計・製造は日本メーカーの独壇場でした。現在の状況がどうなのかは,Acer社の台頭を見るまでもないでしょう。もはや設計や製造の外部委託はパソコン業界の常識です。消費者に相対する「パソコン・メーカー」は,もはや製造業者ではありません。NE本誌の記事を読むと,中でもAcer社の「商社ぶり」は群を抜いているようです。

 この波は他の業界にも広がっています。NE本誌の「CELL REGZA」の記事を読むと,東芝がテレビ事業で黒字を出せる理由は,パソコン事業で培った水平分業型の生産体制にあるそうです。同じ記事には,ソニーは「(テレビ)生産の外部委託を現在の20%から2010年度に40%に引き上げ」ともあります。そこまでしているのに,テレビ業界のAcer社と言えそうな米VIZIO社は,ソニーや東芝を「Legacy companies(旧時代の企業)」とバッサリ。「優れた企業と強い協力関係を結ぶことこそが大切」(CEO 兼 CTOのWilliam Wang氏)と言い切ります。似たような話は他の家電製品でもありますし,電動化の進行に従い,遅かれ早かれ自動車業界でも起こりそうです。

 製造部門の切り離しが世界的に進む中で,「ものづくり」を強みとしてきた日本のメーカーは,一体どこへ向かうのでしょうか。恐らくその答は,企業によって千差万別でしょう。このコラムでも何度か書いていますが,他社と同じことをしているだけでは生き残れない時代だからです。今年は,新たな姿に脱皮するメーカーがいくつも現れるのではないでしょうか。Tech-On!は,その姿を追い続けるとともに,業界や自社の将来像を描くために重要な情報を提供していく所存です。本年もよろしくお願い申し上げます。

ニュース(1月4日~8日)