民生機器関連で米国最大の展示会「2010 International CES」(主催はCEA:Consumer Electronics Association)が米国時間の2010年1月7日に開幕する。前々日の5日,開催地の米国ネバダ州ラスベガスは青空が広がる暖かい陽気。空港や会場には展示会の参加者が続々と集まる姿が見られ,会場の設営作業が進んでいる。

 開幕前日の6日には,パナソニックやソニーのほか,韓国のSamsung Electronics社,LG Electronics社など大手の家電関連メーカー各社が続々と記者会見を開き,2010年の製品ラインナップや戦略を語る予定だ。同日の夕方には基調講演に米Microsoft社CEOのSteve Ballmer氏が登壇し,4日間にわたる展示会の幕が上がる。

 今回のCESで注目を集めるのは,テレビやBlu-ray Disc(BD)プレーヤーなどのデジタル家電に加え,家電や携帯型情報端末とインターネットの連携を加速させる取り組みなどになりそうだ。Samsung社が北米でのシェアを大きく伸ばすきっかけになった,いわゆる“LEDテレビ”(LEDをバックライトに使う液晶テレビ)分野での競合各社の巻き返し策や,テレビやBDレコーダー向けの新たなネット・サービスなどが参加者の関心を呼ぶことになりそうだ。

 ソニーは,2009年11月の経営方針説明会で公表した家電向けのネット・サービス「ソニーオンラインサービス」の詳細を公表するもよう。会期直前にIP電話技術を開発するルクセンブルクのSkype Technologies社との提携を発表したパナソニックのテレビ向け“テレビ電話技術”のデモなども登場しそうだ。

 このほか,米Google社のソフトウエア・プラットフォーム「Android」を搭載した携帯型情報端末やスマートフォン,米国で急速に市場が拡大する電子書籍端末などの新機種の出展が相次ぐとの見方が強い。パソコン関連では,Google社のパソコン用OS「Chrome OS」を搭載した試作機など“ポスト・ネットブック”に向けた取り組みに注目が集まる。

 家電やパソコン向けの次世代高速インタフェース規格では,対応する試作機やLSIなどのデモの出展が多く見られそうだ。AV機器向けの次世代インタフェース規格「HDMI」の新仕様「HDMI 1.4」や,ソニーが開発した近接無線技術「TransferJet」に対応したデジタル家電の製品化時期が明らかになる可能性が高い。

 HDMI 1.4は,車載機器分野への適用や,いわゆる「4K×2K」や3次元映像への対応などの特徴を持つ。TransferJetは,数cmと短い距離を実効375Mビット/秒でデータ伝送できる。非接触ICカードのような使い勝手で,大容量データを転送できる特徴がある。

 このほか,中国の家電メーカーが主導するAV機器の映像/音声インタフェース規格「DiiVA」や,テレビやBDレコーダーなどのAV機器間をEthetnetを使って接続する有線インタフェース規格「HDBaseT」などのデモも関心を集めそうだ。HDBaseTは,伝送距離が100mと長く,電力供給が可能なことなどが特徴。2009年末には開発したイスラエルのValens Semiconductor社や,Sumsung Electronics社などが中心となって標準化を目指す業界団体を発足しており,HDMIやDiiVAとデモ合戦に火花を散らす可能性もある。

 次世代高速インタフェースでは,最大データ伝送速度が5Gビット/秒と従来規格よりも10倍高速な「USB 3.0」でも多くの対応製品が登場すると見られる。会期前には,無線LAN規格「IEEE802.11n」でHD動画を伝送するためのチップセットの発表が米国のLSIメーカーを中心に相次いでおり,これらを使った製品や試作機なども登場することになりそうだ。

 CESを主催するCEAによれば,2009年の世界家電市場は対前年比2%減の6810億米ドルと2008年後半からの世界同時不況のあおりを受けた。同団体は2010年も横ばいと予測する。

 ただ,米国市場では,2010年にテレビを含めたLEDバックライトを使う液晶ディスプレイの出荷台数が対前年比256%増,電子書籍端末が同127%増など伸びる分野も少なくないと見る。家電メーカーが次なる大市場と期待する3次元映像を楽しめるテレビは2010年に430万台の販売が期待できるという。2010年のCESは,こうした分野の新機軸の登場で熱気を帯びそうだ。