ついにマツダを退社した日野三十四氏――。日経テクノロジーオンラインのテーマサイト「設計・生産」では、モジュラーデザインの提唱者である日野氏の連載「一人の技術者がモジュラーデザインを確立した軌跡」が以前にも増して読まれています。2014年11月18日~2015年1月5日のランキングでもトップ3を独占。特に、日野氏がマツダを退社した第13回(2014年12月24日公開)は、単独のページビュー値がテーマサイト全体の合計かと見紛うほど多くの読者を獲得しました。
ランキングの5位は、中央大学教授の竹内健氏による「竹内健のエンジニアが知っておきたい技術経営MOT」の最新の記事「MOT(技術経営)を学ぶには技術と経営のどちらが先か?」でした。この「技術と経営のどちらを先に学ぶべきか」という問いの答えは「技術」です。まず基礎知識(技術力)を蓄積させてから、それを生かす形で課題解決能力やプレゼン力(経営に必要な能力)を養う、という順番を踏むべきという主張でした。
「エンジニアとしても一つの専門分野に留まらず、広く技術から経営までを俯瞰できるMOT(技術経営)の素養を持った人材が必要とされて」いることから、「創造性を持った課題解決能力の教育」「プレゼン力、コミュニケーション能力の育成」が重視されています。竹内氏自身は、当然のことながら「MOTの重要性を訴えてきた」お立場なので「正直なところ、現在の教育改革に対しては複雑な思い」と打ち明けつつ「教育現場で起こっているのは、学生の基礎学力の低下です。基礎の学力ができていない学生に特殊な教育をすれば、課題を解決できるようになるでしょうか」と問題を投げかけます。
これを読んで当サイトマスターは「専門バカ」という言葉を思い出しました。かつて、理系の学生だった当サイトマスターは、一般教養課程の教官に「卒業するときに『専門バカ』になってもらっては困る。しかし『専門もバカ』はもっと困る」と言われたのを覚えています。「専門バカ」とは、1つの専門分野のことは詳しいが、それ以外のことや世間の常識を知らないため、さまざまな角度でものを見ることができない人、といったような意味でした。
竹内氏の記事の表現を借りると、研究者や技術者としての基礎学力はあるが、課題解決能力やプレゼン力、コミュニケーション力が備わっていない状態のことだと思います。それでも、「専門バカ」は、基礎学力が不足する「専門もバカ」よりは優る。一番重要なのは基礎学力だ、という優先順位を示す言葉だった、と改めて思います。