図1●西澤松彦氏らが開発した「バイオ電流パッチ」
図1●西澤松彦氏らが開発した「バイオ電流パッチ」
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図2●バイオ電流パッチの構成(a)と発電の仕組み(b)
図2●バイオ電流パッチの構成(a)と発電の仕組み(b)
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図3●バイオ電流パッチのけい皮電流密度の経時変化。
図3●バイオ電流パッチのけい皮電流密度の経時変化。
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 東北大学大学院工学研究科教授の西澤松彦氏らは、酵素反応を利用することで微弱な電流が発生し、皮膚を通して薬の浸透を促進できる「バイオ電流パッチ」(以下、パッチ)を開発した(図1、ニュースリリース)。パッチは、シリコンゴムやハイドロゲル(電解質)など、生体・環境に優しいフレキシブルな有機材料から構成される。絆創膏のように皮膚に貼るだけで発電できるため、外部電源が不要な家庭用ヘルスケア商品などへの応用が期待される。

 皮膚を通して薬を投与する「経皮投薬」では、鎮痛剤を浸透させる湿布(シップ)や禁煙用のニコチンパッチなどが知られている。経皮投薬では各種有効成分の皮膚内への浸透が、数十μAの微弱電流を流すことで数倍~数十倍まで加速できる効果が認められており、局所麻酔剤の高速投与などに利用されてきた。しかし、この方法は外部電源や配線などからなる装置が必要で、家庭での個人使用には適さなかった。小型電池を電極パッドに一体化する試みもあるが、かさばったり、安全性や使用後の処理に配慮したりするなどの課題があった。今回開発したバイオ電流パッチでは、パッチ内部に発電機構を設けることで、これらの問題を解決できると期待される。

 バイオ電流パッチは、糖を含むハイドロゲルや酵素を含んだ1cm×1cmの2枚の炭素繊維布(電極)、ゴム製の抵抗、これらを保持するシリコンゴム製フレーム、身体に貼り付けるためのメディカルテープなどで構成される。安価な有機材料を使っており、使用後はゴミ箱に捨てることができる。パッチ全体は1cm×3cmの長方形になっており、厚さは0.5mmと薄い(図2)。