写真:栗原克己

 機能や性能、見た目が同じような商品が並んでいたら、値札を見て一番安いのを買うのが普通だろう。でも、皆さんはそうした物ではなく、やっぱりお客さんが「これがほしい」あるいは「これしかない」と思って買ってくれる独創的な商品を造りたいはずだ。筆者ももちろんそうだった。

 こうしたものづくりは、今の多くの日本企業が目指す道でもある。韓国だけではなくアジアを中心とした新興国企業の技術力は急速に高まってきており、“普通の商品”を安く造ることでは、日本企業の持ち味を生かせない。何しろ、新興国の人件費は日本の1/5~1/20なのだ。

 独創的な商品づくりで求められるものこそがイノベーションである。新しい「価値」を創出し、その「価値」で顧客を惹きつけるのである。これは、繰り返し書いてきたことだが、田子學さんもデザインの視点からほぼ同じ考えにたどり着いた。ただし、彼は「価値」ではなく「Wants」と呼ぶ。引き続き、田子さんと話を続けよう。