何だ,やっぱり日本が先に行ってたんだ――先週金曜日に立ち上げた特集「メジャーへと動きだした電子書籍」の記事の一つ,「『電子の本』の普及の扉,ケータイと電子辞書が開く」を読んでそう思いました。もう6年も前の記事ですが,そこに描かれた電子書籍の将来像は,現在の青写真とも言えそうです。「機能が高まった携帯電話機が書籍端末になる」という予測を,iPhone向けに提供された書籍アプリを常用する筆者は,毎日身をもって体験しています。「専用端末の製品化が再び活発に」との主張の先に,米Amazon.com社のKindleを位置づけても間違いではないでしょう。

 残念なのは,現在の市場の主役が必ずしも日本メーカーではないことです。ソニーの電子書籍事業は米国で好調のようですが,話題の筆頭に上がるのは,ソニーを参考にしたとも言われるAmazon社。先行したはずのソニーは,いつの間にか後を追う立場に変わっています。

 あれだけ頑張っていた日本メーカーは,どうして追い抜かれてしまったのでしょうか。市場投入の時期が早すぎた,米国市場で強いのは米国メーカー,などなど,いくつも理由は挙がりそうです。けれど,どうしても筆者の頭に浮かんでくるのは,日本メーカーにはコンセプトはあっても,それを魅力ある端末やサービスに仕立てる能力が弱いのではないかとの懸念。こちらの記事にも書きましたが,ユーザーをもてなすためのソフトウエアやサービスづくりが,十分にできていないのではないでしょうか。

 もう一つ気にかかるのは,目新しいコンセプト自体,最近はあまり出ていないのではないかということ。ここ数週間の記事ランキングを見ていると,クルマの話題は相変わらず豊富なのに,デジタル家電の分野で活気のあるニュースが少ない気がします。日本の家電メーカーは,アイデアを出し尽くしてしまったのでしょうか。あるいは,折からの不況で,発想は面白いけれど製品化のリスクも高い製品から軒並み手を引いてしまったのでしょうか。もう一つの可能性は,水面化でじっくり時間をかけて,凄い製品を準備しているというものです。日本メーカーの「沈黙」が,これを意味していることを祈ります。

ニュース(6月29日~7月3日)