エルピーダメモリ 代表取締役社長兼CEOの坂本幸雄氏
エルピーダメモリ 代表取締役社長兼CEOの坂本幸雄氏
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 エルピーダメモリは2009年6月30日,産業活力再生特別措置法(産業再生法)による出資案件の第1号に認定されたことを受け,東京都内で緊急記者会見を開いた(第一報記事)。同社は公的資金以外にも民間からの融資など,総額1600億円の資金を獲得できる見通しとする。内訳は,産業再生法の適用に伴う日本政策投資銀行からの出資300億円,および融資100億円,民間4銀行からの協調融資1000億円,台湾Taiwan Memory Co.(TMC)からの出資200億円である。

 同社 代表取締役社長兼CEOの坂本幸雄氏は,「DRAM業界は最終レースに突入しており,このタイミングで投資できない企業は競争から脱落する」と述べ,今回の資金獲得によって微細化を継続しDRAM業界での勝ち残りを目指す考えを示した。同社は今回決まった公的資金を50nmおよび45nm世代への微細化投資に振り向ける計画である。ただ,現時点では既存の投資計画(約400億円)を上方修正する考えはなく,「できるだけキャッシュを蓄え,市況回復後の本格的な勝負に備えたい」(坂本氏)としている。

 一方,同社の戦略上重要な台湾DRAMメーカーとの連携に関しては,現時点では目立った進展がない。「TMCとの関係は非常に良好」(坂本氏)とするものの,統合を呼びかけている台湾Powerchip Semiconductor Corp.(PSC)や台湾ProMOS Technologies Inc.は依然として態度を決めかねている。ただ,台湾DRAM各社の業績は低迷していることから,「そう遠くない将来に,米Micron Technology, Inc.のグループに入るか,我々のグループに入るか,色分けが決まるだろう」(坂本氏)と見る。

 また,同社は3年後のあるべき姿として,顧客の問題を解決するメモリ・ソリューション・カンパニーへの転換を表明した。今後,DRAMのビット成長は大きな伸びが期待できないため,特定の用途や顧客に合わせた製品展開が欠かせないとする。特にスマートフォンやネットブックといった携帯電話機とパソコンの融合市場で求められる低消費電力の製品などに力を入れる方針である。