京都で開催された「2009 Symposium on VLSI Circuits」のSession 14「Discrete-Time Analog」では,無線トランシーバLSIへの適用を目指して,離散時間アナログ回路に関するさまざまなアイデアが登場した。例えば,LSIのリコンフィギュラブル化,低消費電力化を目指して,従来のアナログ回路から離れた離散時間アナログ回路の研究が積極的に行われていることが窺えた(うかがえた)。

 同セッションの講演は4件あった。米University of California, Berkeleyは,ダウン・コンバージョンΔ-Σ型A-D変換器を用いて,中心周波数が400MHzから1700MHzまで対応可能で帯域幅が4MHzの受信機を構成した。米Texas Instruments, Inc.は,GSM/GPRS/EDGEの1チップLSIに離散時間信号処理を採用した。東京大学は,インパルスUWB向けに電荷領域サンプリングを用いた相関器を提案した。相関器の消費電力は100Mビット/秒のデータ伝送レートで1.28mWである。

 米MIT(Massachusetts Institute of Technology)は,RFパワー・アンプのプレディストーション方式のダウン・コンバージョン経路に電荷積分のサブサンプリング回路を適用してみた。さまざまな無線通信規格が誕生する中で,ソフトウエア無線機やコグニティブ無線機の実現が望まれており,離散時間アナログ回路はそれらの実現のための重要なキーであると考えられている。今後もこの分野の研究は盛んに行われるであろう。

 なお,このセッッションの4件の発表論文すべてで,共著者としてSymposium on VLSI Circuitsのプログラム委員が含まれている。離散時間アナログ回路に対する関心の高さが窺える。以下で4件の発表のポイントを紹介する。