まさかパソコンOSの話題で盛り上がれる日が再び来ようとは。今週,個人的に一番驚いたのは,Google社がパソコン用OSを投入するというニュースです。パソコン用OSはMicrosoft社の圧勝で勝負がついたと,心のどこかで勝手に決めつけていたことを,今さらながら思い知らされました。もちろんGoogle社の試みがどこまで成功するかは未知数です。それでも,「数秒でコンピューターを立ち上げてウェブにアクセスできる」(同社のブログ)などと書かれると,早く触ってみたくなる。「多くの方が(中略)コンピューターがいつも最初に買ったときと同じ速さで動いてくれればいいと思っています」()といったくだりには,思わず膝を打ってしまいました。Google社の発表に,既に成熟したかに見える技術でも,いくらでもやることがあると再認識した次第です。

 そういえば最近は,一見勝ち負けがハッキリしていそうな市場の景色を塗り替えてしまいかねない発表が多い気がします。例えば米Palm社の「Palm Pre」。PDA市場の衰退とともに消えてしまっても不思議はなかった同社は,Apple社の「iPhone」に勝るとも劣らない端末を投入して世間を驚かせました。iPhoneにぞっこんの筆者も,アプリケーションをサクサク切り替えられるカード型UIは,うらやましくて仕方ありません。Webブラウザーでも新しい潮流が生まれそうです。ノルウェーOpera Software社が開発した「Opera Unite」を使うと,WebブラウザーがWebサーバーとしても動作して,技術に疎いユーザーでも自分のパソコンから簡単に情報を発信できるようになるそうです。

 こうした製品や技術が可能にすることは,少々面倒くさいのを我慢すれば,既存の手段でできたものばかりでしょう。それにも関わらずユーザーの注目を集めるのは,製品の価値の源泉が,使い方や使い勝手の改良に移っているからだと思います。機能や市場が成熟したと見られる製品でも,この視点から見直すと,まだまだ改良の余地がありそうです。

 筆者はスケジュールの管理に,Google社のカレンダー・ソフトを利用しています。便利だと思う反面,何となくしっくりきません。そういえば昔読んだ本に,「カレンダー・ソフトはどうして成功しないのか」といった説明があったのを思い出しました。曰く,「人の時間管理で重要なのは,締め切りや進行中の出来事。しかし,カレンダー・ソフトは『何時から何時まで』で決まる予定を前提にしていて,締め切りや進行中の仕事をうまく取り扱えない」「会議では始まる時間が重要で,終わりの時間は事前に分からないことさえあるのに,両者を同等に扱っている」などなど1)。「確かにそうかも」と思いつつ,どういうカレンダーがあればいいのか,やっぱりよく分かりません。どなたか,無数の締め切りを一望できて,どの仕事をどういう順番でこなせばいいかが即座に分かる,画期的なカレンダーを作ってくれないものでしょうか。

参考文献
1) Cooper, A., The Inmates Are Running the Asylum: Why High-Tech Products Drive US Crazy and How to Restore the Sanity, pp.63-64, Sams Publishing, 2004.

ニュース(7月6日~10日)