29日に会合を開く意味はない

 この結果を受けて開かれた2008年5月13日の第37回デジコン委では,ダビング10への運用移行を「2008年6月2日午前4時」と確定できないと確認し,「引き続きフォローアップWGで合意の方向性を確認してほしい」(デジコン委の主査である慶応義塾大学の村井純氏)と,フォローアップWGへ合意に向けた対応をゆだねる形となった。

 文化庁も,5月29日に予定する録録小委の今期第3回会合で補償金制度の改正案を大筋合意に持ち込むため,先週から今週にかけて案の修正を含めた調整を水面下で続けてきたようだ。だが,メーカーらの反応は芳しくなく,「合意の方向性が見えず,5月8日と同じ議論を繰り返すなら29日に録録小委を開く意味はない」(文化庁の関係者)として,29日の会合を中止する可能性も検討し始めた。29日に録録小委が開かれず,ダビング10機器に補償金制度を適用する改正案の合意が出来なければ,同日に開催される見込みのデジコン委でのダビング10実施の合意はほぼ不可能になる。

 メーカーが態度を硬化させた背景には,監督官庁である経済産業省の意向があるようだ。複数の関係者がそのように指摘するほか,日本民間放送連盟の広瀬道貞会長も,2008年5月22日に開いた定例会見の席上で,読売新聞の記者からダビング10実施について聞かれ,「総務省,経産省,それに文化庁の足並みがそろっていない」と発言している。この件は5月23日付の日本経済新聞朝刊などでも報じられている(広瀬会長の発言を報じた日本経済新聞Webサイトの記事)。

 本来,別々の議論であったはずの私的録音録画補償金制度の改革と地デジの普及推進が,「ダビング10」を介して結びついたことで,この議論は3省庁を巻き込む「戦争」になりつつあるようだ。

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