2008年5月8日に行われた私的録音録画小委員会の今期第2回会合
2008年5月8日に行われた私的録音録画小委員会の今期第2回会合
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 文部科学大臣の諮問機関 文化審議会 著作権分科会傘下の私的録音録画小委員会(録録小委)の今期第2回会合が2008年5月8日に行われた。この席で文化庁は,私的録音録画補償金制度の改定案を提示した(Tech-On!関連記事1)。iPodなどの携帯音楽プレーヤーやHDDレコーダーなどの録画機器を補償金制度の対象機器となる。権利者や学識経験者はおおむね文化庁案を受け入れる意見を述べたが,メーカー系の委員からいくつか疑問の声が出たため,今回の会合では合意に至る方向性は確認できなかった。

 文化庁が今回提示した案(5月8日案)は,1月17日に行われた同録録小委の前期 第16回会合で文化庁が提示した提案(1月17日案)を補強したものである(Tech-On!関連記事2)。1月17日案で文化庁は,
 1. 補償金制度を段階的に縮小し,将来的に廃止する
 2. 「音楽CDからの録音」と「無料デジタル放送からの録画」に限って当面,補償金制度を残す
 3. 権利者が要請した技術的保護手段が適用される場合は補償金制度の対象にしない
という指針を示している。

ダビング10は権利者の要請ではない

 5月8日案はこれを前提にしたうえで適用の考え方や具体的な制度設計案を提示したもの。だが,地上デジタル放送などで導入予定の著作権保護ルール「ダビング10」について,「一連の経緯等から,権利者の要請により策定されたものではない」とし,ダビング10番組を録画する機器について,補償金の対象とすることを提案した。つまり,ダビング10は上記の条件3に該当しないと認定したことになる。この根拠として,「権利者は考え方そのものは支持しているものの,特に回数について,権利者の要請により策定されたものとはいえない」とした。

 この点について,メーカー系の委員から疑問の声が相次いだ。例えば,JEITAの亀井正博委員は「現在の解釈では,特定の権利者団体の委員の意見の通りにならなかったことで『要請ではない』となるように思える。権利者の要請があるか,ないかという点は事実認定が難しく,法的安定性の面で問題があるのではないか」と述べた。

 また文化庁案では,対象機器についてiPodやHDDレコーダーのような「記録媒体を内蔵した一体型機器」を対象に加えることを提案した。現行法では,MDレコーダーやDVDレコーダーのような記録媒体が本体と別となった「分離型専用機器とその記録媒体」のみを対象としているが,これは「現行法の制定当時は一体型機器が存在しなかったことによる」(文化庁 長官官房著作権課 著作物流通室長の川瀬真氏)とした。

 ただし,対象とするのは「録音録画を主たる用途としている機器」という制限を付けた。これにより,パソコンについては「どの機能が主要といえない」,携帯電話機や録音機能付きカーナビについては「録音録画機能を附属機能として組み込んだ」という理由から対象から外れることになった。また,メモリカードやデータ用DVD-Rなど,汎用の記録媒体についてはパソコンと同じ理由で「現状では対象にすべきでない」とした。合わせて,関係者間の協議で対象機器かどうか判別できない場合に備えて「評価機関」を設置することも提案された。評価機関は権利者,メーカー,消費者,学識経験者で構成されるとする。