地上デジタル放送のコピー制御方式を現行のいわゆる「コピー・ワンス」から,9回のコピーと1回のムーブを許す「ダビング10」に切り替える目標日程を「2008年6月2日の午前4時」にすることが明らかになった。ダビング10対応に伴う放送局の送出設備の改修と,各種のテストが5月末までに終了するめどが立ったとする。

 2008年2月19日に行われた総務大臣の諮問機関である情報通信審議会が開催する「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会」の第32回会合で,地上デジタル放送推進協会 技術委員会委員長であるフジテレビの関祥行委員から,デジタル放送推進協会(Dpa)の技術委員会による検討の経過とともに報告された。

 この報告によると,2008年2月1日にDpaの技術委員会でダビング10の技術的な用件に関して合意がなされ,地デジ放送の運用規定である「ARIB TR-B14/TR-B15」の第四編,第八編を改訂した。2月7日からは,DpaのWebサイトなどを通じて,改訂の内容を公開している。

 この報告に対して,実演家著作権隣接センターの椎名和夫氏からは,「第4次中間答申に書かれているクリエータへの対価の還元の実現が遅々として進まない現状で,6月2日といった日程を言われても実感がわかない」という意見が出た。同氏は私的録音録画保証金制度の適用が決まらない限り,コピー・ワンスの緩和はあり得ないという権利者の立場を改めて強調した。

 椎名氏はさらに,「デジタル方式でコンテンツのクローンを作る手段を提供している以上,メーカーに責任がないと言えないはず。メーカーが求められる責任を果たすかどうか,(権利者は)固唾を呑んで見守っている」と訴えた。

 また,ホリプロ 代表取締役社長の堀義貴委員からも「権利者側はダビング10に関しては『聞き置いた』だけで,合意したわけでも妥協したわけでもないことを思い出していただきたい。6月2日という日程は放送局の準備が整い,メーカーがその日に対応機器の販売を始めたいという目標。実現できるように努力してほしい」という発言があった。

 日本映画製作者連盟の華頂尚隆氏からは「第4次中間答申に至る説明ではコピー9回という数字の根拠は,異なる3種類のメディアに3回ずつという話だった。現在の状況では次世代DVDに9回出て行くことになるが,それ以外の技術開発は進んでいるのか疑問がある」といった意見も出た。

 こうした意見を受けた主査の慶応義塾大学 教授の村井純氏は,改めて「6月2日という日程はあくまで現段階の目標日程として,当委員会が報告を受けたもの」と確認した。