NTTドコモが2011年8月に発売した、ワイヤレス給電機能搭載のスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」(シャープ製)
NTTドコモが2011年8月に発売した、ワイヤレス給電機能搭載のスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」(シャープ製)
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 電源ケーブルを使わずに、無線で電力を供給するワイヤレス給電。これまでは技術検討を進める企業が多かったが、2011年は大きく前進して製品投入の段階に入った(関連記事1)。

スマートフォン搭載をきっかけに離陸



 「やっと出せる」――。2011年のワイヤレス業界を語る上で、欠かせない存在がNTTドコモだろう。同社は、2011年8月に発売したスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」(シャープ製)に、ワイヤレス給電機能を組み込んだ(関連記事2)。NTTドコモは2003年ごろからワイヤレス給電の取り組みを始めており、2005年には携帯端末メーカーと共同で試作機を開発したこともあった。技術的な部分は十分に検討して商用化できる段階にはあったが、実用化に至っていなかった。


 2011年に入ってようやく、NTTドコモは製品投入にこぎつけた。冒頭のコメントは、同社の担当者である滝本真氏(プロダクト部 第二商品企画担当)の正直な感想だった(関連記事3)。その後、2011年10月には2011~2012年の冬・春モデルとして、ワイヤレス給電機能を搭載する機種を5機種(スマートフォン4機種とフィーチャーフォン1機種)を発表した(関連記事4)。同社は、「2013年度に投入する端末の半数は、ワイヤレス給電機能に対応させる」(同社 プロダクト部 第二商品企画担当部長 プロダクトビジネス推進担当部長兼務の山口文久氏)方針である(関連記事5)。


 NTTドコモがワイヤレス給電機能を採用することを後押ししたのが、非接触充電の業界標準規格を目指す団体の「WPC(wireless power consortium)」だ。WPCが策定した「Qi(チー)」規格は「電磁誘導方式」を採用し、Qi規格の認定を取得した機器であれば、メーカーが異なっても充電できる。ワイヤレス給電システムにおいて互換性は極めて重要な要素で、NTTドコモもこの点を重視したようだ。


 WPCは2008年12月の団体設立以来、着々と加盟企業を増やしており、2011年10月にはメンバーは100社を超えた(関連記事6)。スマートフォンでは、NTTドコモだけでなくソフトバンクからもQi規格対応品が発表された他、KDDIもQi規格に準拠する送電台を開発し、「第42回 東京モーターショー 2011」のトヨタ自動車ブースで披露した(関連記事7)。3大携帯電話事業者が取り組みを表明した国内だけでなく、海外でも米Verizon Wireless社がQi規格の採用に特に積極的である。


 スマートフォンへの搭載をきっかけに離陸したワイヤレス給電(関連記事8)。スマートフォン側だけでなく送電台の開発も活発で、日立マクセルやパナソニック、ホシデンなどが相次いで製品を発表した(関連記事9同10同11)。さまざまな展示会やモーターショーにもQi規格対応品が多数出品され、例えば「CEATEC JAPAN 2011」では60種類以上の対応製品がずらりと並んだ(関連記事12同13)。

規格争いが本格化