NTTドコモ プロダクト部 第二商品企画担当の滝本真氏
NTTドコモ プロダクト部 第二商品企画担当の滝本真氏
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非接触充電機能を内蔵するスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」
非接触充電機能を内蔵するスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」
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ワイヤレス充電用のコイルとICを内蔵したLiイオン2次電池パック
ワイヤレス充電用のコイルとICを内蔵したLiイオン2次電池パック
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 NTTドコモは、非接触充電機能を内蔵する「世界初」(同社)のスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」を発売する( Tech-On! 関連記事1)。非接触充電システムの業界団体であるWireless Power Consortium(WPC)が策定した規格「Qi(チー)」に準拠していることも大きな特徴である。非接触充電機能を「おくだけ充電」と名づけて普及に向けて積極的に取り組む同社の担当者(NTTドコモ プロダクト部 第二商品企画担当の滝本真氏)に話を聞いた。

――AQUOS PHONE f SH-13Cを2011年7~8月に発売する。まず、率直な感想を聞きたい。

滝本氏 やっと出せる、というのが正直な気持ちだ。当社は2003年ごろからワイヤレス給電の取り組みを進めてきた。2005年には携帯端末メーカーと共同で試作機を開発したこともあった。技術的な部分は十分に検討し、商用化できる段階にはあったが、ワイヤレス給電機能を普及させることが難問だった。普及を考えると、他キャリアや携帯端末メーカー、その他の機器メーカーと協力して互換性を確保することが欠かせないが、当時はワイヤレス給電の標準規格がなく足並みをそろえるのが難しかった。

 こうした状況が、WPCが規定した標準規格Qiの登場で変わった。最初のころはQiがどの程度普及するのか不透明な部分があったが、最近になって急激に加盟企業が増えてきた。デファクト・スタンダードなワイヤレス給電の規格になるだろうと判断し、当社もこれを採用しようとなった。Qiで行こうと決めたのは、2010年11~12月ごろだ( Tech-On! 関連記事2)。

――ワイヤレス給電に取り組む理由は何か。

滝本氏 携帯電話機ユーザーの利便性を向上させることが目的だ。スマートフォンが主流になりつつある中で、「電池の持ちが悪い」という声が増えている。スマートフォンに搭載するLiイオン2次電池の容量を大きくすれば不満は解消できるが、それでは根本的な問題の解決にはならない。Liイオン2次電池の進化は正直、限界に来ていると思っている。Liイオン2次電池の進化を気長に待っているわけにはいかない。今回は、「充電の機会を増やす」「充電できる環境を増やす」ことに焦点を合わせて取り組んだ。

 「おくだけ充電」の訴求ポイントは、なんと言っても“楽”な点。コネクタに挿すにしても卓上ホルダに設置するにしても、一般的な端末では充電時にきちっと接続しなければいけない手間が発生する。それが、適当に置くだけで充電できるようになった。目立つものではないが、頻度、回数が多いので効いてくる。例えば、充電コネクタのキャップを開け閉めする必要が無いのは大きなこと。特に女性は、爪が長い方も多く、「開けにくい」との意見を多く頂く。キャップが破損するなど故障のリスクも軽減できる上、防水機能を実現しやすくなるため、端末メーカーからみたメリットもある。

――今後の展開について教えてほしい。

滝本氏 おくだけ充電に対応した端末は、2011年冬モデルで数機種出す計画だ。その後も対応機種を増やしていきたいと考えている( Tech-On! 関連記事3)。対応端末の拡充と並行して、インフラの整備に取り組んでいく。外出先で充電できる環境を整備するため、ANA(全日本空輸)、TOHOシネマズ、プロントコーポレーションの三つの事業者と連携してトライアルを実施する計画だ。他の飲食店や施設とも検討を進めている。

 普及のイメージとしては「おサイフケータイ」に近くなるだろう。最初は当社が充電台を無償で配ることを検討しているが、徐々に自発的に設置してもらえるように進めていきたい。おくだけ充電のロゴも作ったが、おサイフケータイのように他キャリアにも使ってもらえればと考えている。

 一点、懸念しているのはその充電台だ。この台は、電磁誘導を利用して電力を伝送するため、少なからず電磁雑音が発生する。今回発表した機種では、シャープや三洋電機と協力しながら、対策を施している。両社とは5年ほど前から連携して研究開発を続けており、雑音が発生しても問題なく通信ができるよう、設計から試験まできっちり行っている。

 一方、WPCの規格はあくまで充電規格であって、通信の部分まで細かく規定されていない。デジタル・カメラなどでは全く問題ないが、携帯電話機では通信に影響が出ないように考慮する必要がある。WPCの規格に対応していれば、メーカーが異なっても充電は問題なくできるだろうが、その時に通信できるのかは別問題。そこをどうケアするかは考えなければならないことだ。今後、さまざまなメーカー製の充電台が増えていく中で、我々が通信機器でも問題ないことを確認して機器を作る必要があるかもしれない。