ワイヤレス給電技術の利用拡大に向けた動きが加速している。これまでは電動歯ブラシやコードレス電話など、限定的な用途にとどまっていた。それが、2011年夏に対応スマートフォンが登場するのをきっかけに、状況が大きく変わる。数年後には電気自動車への搭載も期待されており、巨大市場が立ち上がる可能性がある。搭載端末と社会インフラの両面で、普及に向けた取り組みが活発化し始めた。

2015年には約240億米ドル市場に

 2011年に入り、携帯電話機やスマートフォンを非接触で充電する目的で、ワイヤレス給電機能を搭載する例が、国内外で相次いでいる。

 「やっと出せる」──。NTTドコモは、2011年7~8月に販売を開始するシャープ製のスマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」に、ワイヤレス給電機能を組み込んだ。SH-13Cの商品企画を担当した滝本真氏(NTTドコモ プロダクト部 第二商品企画担当)は正直な感想を口にした。同社は2003年ごろから、携帯電話機にワイヤレス給電機能を搭載することを目指して研究開発を続けていた。

 米国では、携帯電話事業者で最大手のVerizon Wireless社が「携帯電話機の半数をワイヤレス給電機能に対応させる」と宣言した。既に、台湾HTC社や韓国LG Electronics社など大手携帯電話機メーカーと協力してスマートフォンの開発を進めている。

 調査会社の米IHS iSuppli社によれば、ワイヤレス給電装置の市場は2010年は1億2390万米ドル規模だが、2011年は7倍以上の8億8580万米ドルに急増すると予測する。その後も順調に成長し、「2015年には237億米ドルの巨大市場が生まれる」(同社)と見込む。

『日経エレクトロニクス』2011年7月11日号より一部掲載

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