製品開発のリードタイム短縮やコスト削減に対する要求を背景に,設計部門でのCAE活用が叫ばれるようになって久しい。設計の前倒しと試作や実験の削減に効果があると期待されているからだ。
しかし,設計検討の段階でCAEを使って事前評価する体制を,狙い通りに構築できているところは少ない。解析作業を製品開発プロセスの一環としてきちんと組み込んでいないために,場当たり的な作業が多いのだ。加えて近年は,解析データの管理と再利用も問題となっている。CADデータはPDMで管理していても,多くの企業は解析データの管理は担当者まかせというところがほとんど。そのため,既存の解析情報を有効活用できずにいる。
ところが,こうした課題を抱えながらもコスト削減や品質向上に対するニーズから,CAEそのものに対する期待は高まる一方。解析業務は増大し続けており,その負担は解析担当者や解析部門に重くのしかかっている。これでは本来の狙い通りの効果は得られない。CAEを有効活用して設計品質を前倒しで評価できる体制を築くには,これまでの属人的な解析業務のプロセスを見直し,ワークフローやデータ管理の仕組みを再構築しなくてはならないはずだ。
そこで本連載では,十数回にわたりCAE業務の改革に携わるコンサルタントにCAEによる設計評価体制を確立するための方法論について解説してもらう。何が問題となっているのか,課題解決にはどういうアプローチで臨むべきかを筆者らのこれまでの経験に基づいて語ってもらう。
- 連載の目次
- 解析担当 佐藤さんの苦悩 その1 −急に言われても…−
- 解析担当 佐藤さんの苦悩 その2 −昔の事例が分からない−
- 解析担当 佐藤さんの苦悩 その3 −部門の都合で板ばさみ−
- 解析担当 佐藤さんの苦悩 その4 −どうすれば設計者も使えるのか−
- 佐藤さんの課題分析 その1 −要因展開で原因を掘り下げる−
- 佐藤さんの課題分析 その2 −あいまいな解析の位置づけ−
- 佐藤さん,コンサルタントに相談 −何のための解析なのか−
- 佐藤さんの提案準備 −「見える化」で実態を把握・分析−
- 佐藤さんの設計者ヒアリング −設計の視点から解析の位置付けを探る−
- 上司と改革の方向性を相談 −解析の位置付けを変える−
- 業務改革を役員に提案 −改革を実現するための体制を整える−
- 設計評価推進プロジェクトが始動 −各部門の意見を聞く−
- システム化の検討始まる −ベンダーを呼んでデモを見る−
- CAEの自動化に着手 −何を自動化したいのか−
- 設計者が求める解析とは −設計初期の最適化も念頭に−
- プロジェクトから1年 −設計評価業務はどう変わったか−