電通国際情報サービス 製造システム事業部
ソリューション営業部 大嶋洋樹
ソリューション企画部 伊藤宗寿

 業務改革の進め方であるステップアップアプローチを学んだ佐藤さんは,思い切って,CAE業務の改革を役員に提案しようと考えた(ステップアップアプローチに関しては第7回を参照)。そこで,コンサルタントの宮崎さんに改革の方向性を相談することにした(図1)。図1
図1

「見える化」で実態を把握・分析

 「宮崎さん,以前にお聞きしたステップアップアプローチに関しては理解できました。ただし,改革に着手するためには,上層部を説得しなければなりません。どうすれば,改革の必要性をうまく伝えることができると思いますか?」
 「まずは『実態の把握と分析』が重要ですね。CAE業務を改革しようにも,実態が分かっていなければ,何もできませんから。実態とあるべき姿がかい離していることを客観的なデータで示しましょう」
 「実態ですか…。このままではダメということは何となく分かるのですが,正確には把握できていませんね」
 「これから調べればいいんですよ。実態の調査も含めてプロジェクトという形で提案しましょう」
 「具体的にはどのようなことを調べる必要がありますか?」
 「CAEで行なっている設計評価や製品分野,CAEの利用状況,実績などです」
 「とても私だけでは分かりません。それぞれの情報を知っていそうな人に聞いて回らなければならないから,大変そうですね」
 「そう弱気にならなくても大丈夫です。まず,きちんとプロジェクトとして提案します。あとは,短い時間でかまいませんので,該当する方に予定を空けてもらえばいいのです」
 「プロジェクトとして提案すれば確かにできそうですね。ただ,設計評価や製品分野はともかく,利用状況や実績は,聞いてもすぐに分からないかもしれませんね」
 「大抵,そこが問題になります。過去の情報は整理されていないことが多いので,すぐにはまとめられません。とはいえ,実態とあるべき姿のギャップを知るためにも,正確な情報が不可欠です」
 「共有フォルダには,解析報告書のような解析結果データがある程度はあります。これらをまとめればそれなりに分かりますが,それ以上となるとやはり大変そうです」
 「では,少し手間はかかるかもしれませんが,次のような進め方はどうですか?」

a)CAE業務に関するデータが「見える」仕組みを構築する
 解析の利用状況や実績を「見える化」するためには,一つの場所にためておかなければならない。その仕組みを用意し,そこに関連情報をためていく。

b)過去のデータも「見える」ように整理・移行する
 「見える化」の仕組みを構築するだけでは,構築後のデータしか集めることができない。1年分のデータを分析したい場合に,1年後まで待つのでは悠長すぎる。過去のデータを整理し,前出の仕組みに移行することで,すぐに分析を始められる。

図2
図2

 以上のように「見える化」を進め,実態を把握・分析することで,説得性のある改革案を上層部に提出できる(図2)。

リソースの確保が一番難しい