電通国際情報サービス 製造システム事業部
プロダクト開発部 伊藤宗寿
設計評価システムの立ち上げプロジェクトから1年,ある水曜日の午前8時,佐藤さんはいつものように自分の勤務する工場へと向かっていた。工場が一部フレックス制度を導入したことで,以前のような渋滞はなく,スムーズに車通勤ができるようになっていた。ただ,昨夜は久しぶりに代行を頼んで2軒も飲みにいったので,まだお酒が残っているようだ(図1)。 | 図1●工場へ向かう佐藤さん |
自席に行くと,隣の相馬課長は出社していた。
「昨日の,プロジェクト報告よかったな」 |
珍しく,相馬課長が褒めてくれた。昨日,1年間やってきたプロジェクトの報告会があり,そこで佐藤さん含めプロジェクトメンバーが発表を行ったのだ。
「昨日はずいぶん飲んでたなあ,ちゃんと帰れたか?」
「はい,打ち上げだったので,つい飲みすぎてしまいました」 「ま,1年がんばったもんな,佐藤」 |
佐藤さんは,1年をかけて,プロジェクト活動として当初計画通り,様々な業務改革の取り組みを進めてきた。その結果(1)解析のデータを蓄積し,分析する仕組みの構築(2)ターゲット機種の設計評価項目の洗い出し(3)解析自動化テーマの決定と,自動化の実現(4)自動化できた解析テーマについて,サンプリング手法による傾向分析−−など,各部署から前向きなコメントが聞かれるようになっていた。
佐藤さんは机に向かうと,ここ半年そうしているように,ノートパソコンを起動し,Webブラウザを立ち上げた。解析業務Webシステムの画面を確認するためだ。
「さあて,進捗を確認するか」 |
ログインすると,Webブラウザの画面に自分の業務の状況が表示される。そこには,現在自分が抱えている解析業務の一覧が示されている。さらにクリックすると,解析サーバで計算中の計算処理の進捗も確認できる。
「昨日までに流していた計算は全部終わっているようだな。これで今日中には第一報を設計側にフィードバックできそうだ」 |
最近では,急な解析依頼はぐっと減っていた。洗い出した設計評価項目に基づいて,設計段階において解析で検証すべき内容があらかじめ決まっているからだ。解析業務を事前にスケジュールしやすくなったため,設計部門が急に依頼してくるようなケースも少なくなった。今でも残る急な依頼は,先行開発のような研究色の強い依頼か,不具合対応の依頼くらいだ。
「これから,五十嵐常務への報告だ。資料まとめなきゃ」 |
増えたデータの再利用
佐藤さんは昨日までの解析実施件数のまとめを作成しようとしていた。常務に対する報告では,過去と現在でどの程度件数が変化し,どんな効果があったかを報告する必要があるためだ。
実施した解析に関する情報は,今では解析業務Webシステムからすぐに取り出せる。ボタンをクリックすれば,解析実績一覧表が出てくる(図2)。
今までは,このような集計をするだけで1週間はかかっていた。それがものの何分かで出てくるなんて,その頃に比べると夢のようだ。
次に,過去の解析に関する検索数を集計してみた(図3)。
検索で閲覧されている回数は軽く1000件を超えていた。予想していたよりも,設計のメンバーが検索してくれている。実験関係や品質保証部門など設計と解析以外のメンバーも検索しているようだ。検索回数の結果を確認しながら気付いた。
(検索されているデータの登録者欄に千葉さんの名前が目立つなあ) |
あらためて確認してみると,やはり検索されたデータの多くは,千葉さんが登録した解析結果だった。登録数が他のメンバーと比べて極端に多いわけではないのにどうしてだろうか——疑問に思った佐藤さんは,千葉さんのPHSに連絡を入れた。