電通国際情報サービス 製造システム事業部
CAE技術部 岩田智行
ソリューション企画部 伊藤宗寿

 佐藤さんの今日が終わった。(なんて一日だ。朝から課長や設計部や,いろんな人たちと話をする日だったなあ)そう思いながら,今日も夜遅くに駐車場に向かった。
  車を運転し,守衛さんに「お疲れ様でした!」と元気にあいさつしながら工場を後にしつつ,佐藤さんは考えていた。
 (今日はジョブがうまくいかないし,急な解析依頼もあるしでまいったなぁ。しかし,本当の俺の仕事は何なのだろうか?過去の事例を探して設計部の依頼を調整する,本当にこんなことでいいのだろうか?)
 いつもなら同僚を誘って代行を頼んで飲みに行き,互いに語り合うところだが今日は違っていた。
 (何が悪いのかな?なんとかならないのかな?状況を改善することはできないのだろうか?でも,今は改善策も思いつかない。)
 (いきなり改善ではなく,何が問題なのか,まずは考えてみればいいのかもしれない....)

 これまでの4回の連載では,架空の解析担当者である佐藤さんの視点から設計現場の日常とそこに存在する解析業務にまつわる課題を洗い出した。これから2回にわたって,課題の再確認と,それらの課題を引き起こしている原因について少し掘り下げてみよう。

解析のリソースが足りない

 設計品質を前倒しで作り込むべく,CAEを活用した品質評価のニーズが高まっている。当然,解析担当部門に対する製品開発の寄与への期待も年々大きくなるばかり。ところが,佐藤さんの事例で示したように,解析業務の量は増大しているにもかかわらず,それを個人の力量に依存している企業が多く,担当者に大きな負担がかかっている。業務効率化を促す仕組みも整備は遅れがちだ(図1)。


図1

 これらの問題は,端的にいえば「解析担当部門のリソースが不足している」ということだろう。中でも多いのは,期初の人員配置や計画が適正でないため,技術者の人数が不足してしまうケースである。「佐藤さんの悩み・その1」のように,かなりの量の解析業務が見込まれると分かっているにもかかわらず,相応のリソースを準備していない企業は少なくない。人的な不足だけでなく,十分なハードウエアやソフトウエアが,解析部門にそろっていないこともしばしばだ。

 しかし,リソース不足ということは分かっていても,人材や資金は限られていて,どこから手を付けていいのか分からないというのが実情だろう。こうした場合,どういうアプローチで課題に当たれば良いのだろうか。
 それにはまず,課題を形成している原因や要因を客観的・全体的に捉えてリストアップした上で,それをさまざまな角度から眺めてみる必要がある。実際に「解析担当部門の人的リソースの不足」という問題について要因を考えてみよう。

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