電通国際情報サービス 製造システム事業部
CAE技術部 吉田夕貴夫
ソリューション企画部 伊藤宗寿

 CAE業務の改革を役員に提案するため,必要な情報を得るべく動き始めた佐藤さん。大まかな改革の進め方をコンサルタントの宮崎さんから聞き,設計者へのヒアリングを実施したところで,これまで得た情報を基に作成した改革案の内容と方向性を,直属の上司である相馬課長と相談することにした(図1)。きちんと手順を踏んだ佐藤さんは,いつになく自信に満ちあふれている。図1
図1●佐藤さんと相馬課長の相談風景

「定着」という視点

 「相馬課長,折り入ってご相談があるのですが…」
 「折り入って? ちょっと怖いなぁ。転職したいとか,そういうことじゃないよね?」
 「まさか! 実は業務改革をしたいと考えていまして,その相談です」
 「業務改革なんて考えていたの? それなら詳しく教えてもらおうかな」

 「ところで,何で業務改革をしたいなんて思ったわけ?」
 「そうですね。きっかけは,たまたま二つの部署からの解析依頼が重なったとき(第3回)に,私の普段の業務を振り返ってみた(第5回)ことにあります。いろいろ考えた結果,CAE業務のあり方に課題があることが分かりました。そこでまず,コンサルタントの宮崎さんという方に,改革の内容や進め方について助言を仰ぎました(第7回)。そこで『ステップアップアプローチ』という手法を教えていただき(第7回)改革には現状把握が必要であることを理解しました(第8回)。次に,現状把握のために設計者へのヒアリングを実施しました(第9回)。その結果,CAE業務を設計プロセスの一部として考えなければならないことが分かったのです。ですから,設計プロセスの観点からCAE業務のあり方を再定義するという方向で,改革を提案したいと考えています。そこで,相馬課長のご意見をうかがいたく参ったわけです」
 「よくそこまで考えたねぇ。よほど現状の業務に問題があると感じたわけだ。確かに,論点はよく整理できていると思う。でもさぁ…」
 「でも,何でしょうか?」
 「その通りに改革が進めば,よりよいCAE業務プロセスが実現できるかもしれない。けれど,本当に問題なのはその新しいプロセスを『定着』させることじゃないのかな。継続するための仕組みも必要ってこと」
 「定着,ですか…」
 「最初に取り組んだ機種なり部品なりで新しいプロセスを実現できたとしても,そのあとが続かなければ,改革したことにならないよね。頻度の高い解析業務全般に関して,新しいプロセスをどのように効率良く適用していくのかも考えなきゃ」

 (改革に着手しようという話をしているのに,もう「定着」のことを考えるなんて,気が早すぎるんじゃないかな)と,佐藤さんは考えていた。

解析と解析担当者の位置付けが変わった