電通国際情報サービス 製造システム事業部
ソリューション企画部
伊藤宗寿
設計部門からの難題
朝に依頼のあった設計一部の設計者村上さんとの打ち合わせ。急いで熱解析しなくてはならない件があるとPHSで話していた。正直なところ時間はないが,佐藤さんは打ち合わせをするためにひとまず社員食堂にある喫茶店前の机に向かった(図1)。 | 図1 |
「で,どんなご用件で」 「今プロジェクトで走っている次期モデルの熱解析が必要なんだよ」 「次期モデルって,デザインをずいぶん斬新にしたやつですよね」 「そうそう,それなんだけど,デザインを変えたので,熱の分布も従来機種から変わっていると思うんだ」 「で,私へのご依頼は,今週じゅうに,その解析を....」 「そう!頼むよ,急なんだけど」 「いや,既に設計二部から依頼されている解析があって,それも,今週一杯なんですよ」 「え!そりゃ困るよ。うちの清水課長からは,この熱解析は重要だから,是非に,といわれているんだよ」 「そんなこと,僕じゃなくてうちの相馬課長を通して言ってくださいよ」 「そうか,設計二部の件は相馬課長がOKしたのか…?」 「い,いえ,そうじゃないんですが。僕が直接受けたんです」 「じゃ,こっちのはどうして相馬課長への相談が必要なの?」 (困った。確かに言うとおりだ。でも,相馬課長は来たもの順で受けてしまう人だから,いちいち相馬課長に相談してないんだよね。どうやって反論しようか.....)
「じゃ村上さん,とりあえず過去に類似したモデルとか,そういうのはありますか?」 |
「千葉さんですか?佐藤です。設計一部の過去モデルで,熱解析ってやったことあります?」 「ありますよ。半年くらい前ですが,私がやりました」 「そのときの結果報告とか条件設定とか教えてもらいたいんだけど」 「えーっと,半年以上前だとハードディスクの容量が限られているんで,モデルを削除してるんですよ。」 「え,じゃあ,条件設定とか分からないってこと?」 「そうですねえ,さすがにそこまで覚えていないですよ。佐藤さんだって,覚えてます??」 (確かに千葉さんの言うとおり。覚えてるわけない。熱解析のデータは容量が大きいので,半年くらい経つと削除していかないと困るんだよね。しかし,それも分からないんじゃ今度の解析もまた試行錯誤するしかないのか?) |
このようなやり取りは解析に限らず,技術者なら多少なりと心当たりがあるはず。過去の類似の例がわかっていれば,同じ苦労をしないで済むと分かっているものの,何度も同じ苦労を繰り返してしまうという状況だ。整理すると,以下の課題が挙げられる。