電通国際情報サービス 製造システム事業部
ソリューション企画部 伊藤宗寿

 ついにこの日がやって来た。佐藤さんは,担当役員の五十嵐常務も出席する会議で,CAE業務の改革を提案するのだ。一人の解析担当者として苦悩する日々(第1回)から,現状の課題を整理(第5回),コンサルタントとの相談(第7回),設計者へのヒアリング(第9回),直属の上司である相馬課長との相談(第10回)と,着実にステップを踏んできた。CAE業務の改革と聞いて,五十嵐常務はどう思うのか,気になって仕方ない。

 会議が始まった。ほかの案件の議事は問題なく進み,いよいよ佐藤さんに順番が回ってきた。佐藤さんは緊張しながらも,まず現状の課題,改革のコンセプトや進め方を説明し,そして具体的な計画の提示に入った(図1)。


図1●佐藤さんが提案している様子

 「ご説明してきましたように,現在わが社はさまざまな課題を抱えていますが,これらの課題を解決する手順として『ステップアップアプローチ』(第7回)が有効なのです。では次に,このアプローチを実現するための具体的な活動計画に移ります。活動計画の柱は大まかに二つあります(図2)。一つめの柱は,『設計評価推進プロジェクト』なる組織を発足し,ここに設計部,解析部,実験部からそれぞれ数人ずつのプロジェクト・メンバーを送ります。このメンバーが定期的に会合し,設計プロセスにおいて性能評価や機能評価をどのように進めていくのかについて議論を進めていきます」


図2●改革活動のコンセプトと骨子(画像をクリックすると別画面で拡大表示します)

 ここでようやく,それまで黙って聞いていた五十嵐常務が口を開いた。

解析結果を勝手に消している?




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