エンジニアス・ジャパン マーケティング本部
工藤啓治

電通国際情報サービス 製造システム事業部
プロダクト開発部 伊藤宗寿
CAE技術部 若林英一

 いろいろな苦労や課題がありながらも,プロジェクトは一歩一歩前進している。佐藤さんは,再度プロジェクトメンバーを集めた。設計部の村上さん,解析部の佐藤さんと千葉さん,実験部の松田さんだ。解析担当者をサポートし,設計者にもメリットがある「解析の自動化と設計者展開」について,システムベンダーの若林さんを交えて協議するためである(図1)。ここで若林さんの話を聞くうちに,佐藤さんはもともと自分がイメージしていた「解析の自動化」が,若林さんが紹介する自動化とは違っていることに気づき始めた。


図1●メンバーにシステムの説明をする若林さん

 会議ではまず,CAEの何を自動化したいかという話から始まった。最初に若林さんが,一般的な自動化についてシステム的な面からの説明を始めた。

CAEの何を自動化したいのか


 CAEの自動化は,いくつかのパターンに分類される(図2)。代表的なものとしては,「I-deas」「ADAMS」といったCAEソフトウエアの「マクロ・スクリプト言語」を利用するケースがある。多くのCAEソフトウエアにはマクロ・スクリプト言語による処理の自動化機能があるため,これを利用すれば多くの操作を自動的に実行できる。半面,スクリプト言語によるプログラミングの知識や,CAEソフトウエアごとに異なる設定についてのマクロ知識などが必要となる。


図2●解析の自動化の分類

 次に,手順を定型化した「ナビゲーション」と呼ばれる方法がある。メッシュ作成,境界条件設定,計算実行,ポスト処理などの処理を定型化し,あらかじめ決まった手順に従ってユーザーが画面操作を行うだけで,解析を実行できるものがある。さらにこのナビゲーションは,CAEソフトウエアの中にその機能が組み込まれたものと,先のマクロ・スクリプト言語を利用して実現するものに分類できる。

 一歩進んで解析モデル自体を雛形として自動化する『雛形』式の方法もある。これは,寸法駆動ができるCADモデルをあらかじめ雛形として用意し,寸法や条件を変更する形で解析を自動化する方法である。

 最近実現されつつある自動化の例としては,CAEの操作手順だけではなく,CADモデル準備から結果評価までを一連のプロセスとして自動化する方法がある。プロセスを自動化することにより,設計の中で必要な変数を与えるだけで、性能評価・設計評価に必要な解析結果や数値が得られるといったことが可能となりつつある。


若林さん:「以上のように,システム的な面から申し上げますと,CAEの自動化と一口で言いましても,いろんな切り口や方法があります。ご理解いただけましたでしょうか?」

佐藤さん:「いろいろあるということは分かりましたが,私たちが普段実施している解析はどうなのかが,ちょっとイメージできないんですよね」

 今までは,自動化すれば作業が簡単になって便利だと単純に考えていた佐藤さんだが,若林さんの説明で自動化にもいろいろな方法があることを知った。続いて,若林さんから具体的なテーマについて質問が出た。

どのように自動化のターゲットを絞り込んでいくか