電通国際情報サービス 製造システム事業部
ソリューション企画部
伊藤宗寿

 設計一部の村上さんから,急な解析を依頼された佐藤さん。既に設計二部に頼まれた仕事があるため,設計一部の仕事はこのままでは受けられない。村上さんには,佐藤さんの上司である相馬課長と相談してもらうしかない(図1)。
●図1

部門の都合に板ばさみ

「仕事が一杯の時には,相馬課長に調整してもらっているんですよ。
なので,すみませんが,相馬課長に相談お願いしますよ」
「しょうがないなあ。分かったよ。うちの課長経由で相談するよ」

 数時間後,佐藤さんは相馬課長に呼び出された。もちろん,先ほどの村上さんからの依頼の件だ。課長の席に行ってみると設計一部の清水課長も一緒にいる。

「佐藤君,どうしても今週中には無理なのか?」

と相馬課長。

「ええ,設計二部の解析が今週中なんです」
「そんなこと,聞いてないぞ」
「は,はい。すみません」
「そもそも,解析グループのミッションとしては,設計一部の解析を実施するのがミッションなんだよ」

 確かに,解析グループは主に設計一部の仕事を中心に回しているので,間違っていない。だが,二部の解析をやる部門がないので,結局どちらも解析グループでやるしかないのだ。そこで,設計一部の清水課長が切り出した。

「そんな議論は置いておいて,設計二部の仕事を調整しなくちゃいけないんだろ。すぐに設計二部の石井さんを呼ぼうよ」

 清水課長はすぐにPHSで石井課長を呼び出した。石井課長が来るやいなや,清水課長はこう切り出した。

「石井さん,おたくの解析依頼,来週じゃだめかな?」
「えっ,そりゃ困ります。結構定型的な解析として必ずやることになってるんですよ」
「それって,どういうこと?」
「つまり,設計の過程で熱解析をやったものでないと,設計承認しないことにしているんです」
「ということは,すべての設計モデルについて,必ず熱解析をやっているってこと?」
「そうです。そういうルールなんです」
「その出図はいつです?」
「来週です。だから今週中にとお願いしてたんですよ」

 佐藤さんは頭を抱えた。

(さらに困ったことになったな。どちらもそれなりの言い分があるし。どちらかというと,ルールと言い切っている石井課長のほうが正しいような気もするけど…。で,結局僕は,どっちの仕事をすればいいんだろ?)

解析の位置付けがあいまい