「鎖国のときは栄え、開国したら衰退」「日本のDRAM、『安すぎる』と非難され、やがて『高すぎて』売れなくなる」「100年ぶりの通信自由化がもたらしたもの」。これらは、技術ジャーナリストの西村吉雄氏がコラム「電子立国は、なる凋落したか」向けに執筆した記事のタイトルだ。実は、テーマサイト「産業動向」における今回(期間:2014年1月23日~2月20日)のアクセスランキングでは、これらの記事の全てがトップ5入りを果たしている。
オープン化された水平分業は実は…
中でもトップ1に輝いたのが、「鎖国のときは栄え、開国したら衰退」である。コンピュータ市場において日本がなぜ精彩を失っていったのか、などについて分析を加えたものだ。その内容については同記事に譲るが、この中で筆者の西村氏は興味深い事実を幾つか指摘している。
その1つが、「オープン化された水平分業には、原則、誰でも参入できる。ところがその開かれた水平分業は、独占の発生しやすい産業構造でもある」ということである。西村氏はその理由を次のように説明している。
「二つのOS、『A』と『B』が市場で争っているとしよう。Aの方が少しシェアが高くなった。そうなればアプリケーションを開発している会社は、多少なりともAを優先するだろう。Aの上で動作するアプリケーションが増える。となるとユーザーは、AをOSとするパソコンを買いたくなる。当然Aのシェアが上がる。そうなればアプリケーションの会社はますますAを優先し、Aの上で動作するアプリケーションが増える。ユーザーはいっそうAを買う。一度勝ち組になると、ますます勝ちやすくなる構造がここにある。この正帰還現象を『ネットワーク外部性』と言う」
もう1つが、「ネットワーク外部性による独占は、同じタイプの優れた製品の投入では、なかなか破れない。シェアが上だという理由で、ますますシェアが上がってしまうからだ。同じタイプの製品では勝負せず、勝負を別の土俵に移す。ネットワーク外部性が働いている場では、この戦略が有効である」という点だ。
例えば、OSに対するWebブラウザである。同氏は、「WebブラウザはWebサイトを閲覧するためのソフトウエアである。けれども、自分のパソコンに保存されているファイルをWebサイトと同様に扱い、Webサイトを訪れるのと同じ感覚で自分のファイルにもアクセスできる。一般のパソコン・ユーザーにとってOSは、ファイルにアクセスするための画面として機能している。同じことがWebブラウザでできるなら、OS画面は開かず、ブラウザ画面を開いて、ファイルにアクセスしたり、Webサイトを見に行ったりすればよい。こうすると、ユーザーにとってのパソコン・インタフェースは、OSからWebブラウザに移る」と説明している。
日本の電機メーカーは、携帯電話市場やコンピュータ市場で見られるように、市場が閉鎖的で産業構造が垂直統合型の間は強いが、市場がグローバル化し産業構造が水平分業化されると精彩を欠くきらいがある。西村氏が指摘しているように、「同じタイプの製品では勝負せず、勝負を別の土俵に移す」ことが求められているかもしれない。
記事掲載当初、コラム「電子立国は、なる凋落したか」の筆者名に誤りがございました。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2014/02/24]