電機産業の弱体化が叫ばれている日本。だが、今でも海外から強烈な支持を得ている家電製品もある。それは、テレビでもエアコンでも、冷蔵庫や洗濯機でもない。多くの日本の家庭で当たり前のように使われてきた炊飯器だ。日本人から見れば、あんまり目を引かなくなった小さな家電かもしれない。しかし、炊飯器は、日本に来た中国人の観光者にとって、定番とも言える人気の高い土産品だ。まさに、炊飯器は日本家電製品の「顔」と言っても過言ではない。

 炊飯器は、お米に代表される日本の食文化から生まれ発展してきた家電製品だ。だが、そこには「ご飯をおいしく炊ける」ということ以上の魅力があると筆者は感じている。言い換えれば、そこにはハイテク産業発展のヒント(旨み)が凝縮されているのではないかと筆者は見ているのだ。そこで本コラムでは、炊飯器を最初のテーマとして取り上げたい。

世界へ広がった日本発の感動

 筆者は、小学生時代からも、両親が共働きなので、家事の手伝いに携わっていた。その中で一番難しいのはやはりご飯を炊くことだった。水の量、火力の加減に苦労したことは今でも覚えている。そうした苦労があったからこそ、炊飯器を初めて使った時の感動は深かった。

 当時の炊飯器はとてもシンプルで、ただご飯を炊けるというだけのものであり、保温すらできなかった。食感も普通だった。だが、とにかく時間と手間をかけずに済む。このことが、筆者に大きな満足を与えた。

 筆者は、それから炊飯器を何度も買い換えたが、炊いたご飯はどんどんおいしくなり、機能もますます増えている。小さな炊飯器から受ける感動は今でも絶えていない。