技術者にとっても気になる技術経営や管理、人材育成などの話題を取りあげるスキルアップ。2016年も事故を巡る安全性の議論、品質管理や設計手法、技術経営の話題で盛り上がりました。では2016年のランキングを振り返ってみましょう。

 1位となった「なぜVW社は排出ガス不正問題を起こしたのか?」は3月の記事。元トヨタ自動車の技術者で愛知工業大学工学部の藤村俊夫教授に、2015年9月に発覚した独VWによる排出ガス規制の不正の背景を聞いています。

 トヨタでディーゼルエンジンの触媒システムを開発した藤村教授は、他国と比べて一段と厳しい米国のディーゼル規制の厳しさをまず解説。各国の自動車メーカーが撤退する中で、ディーゼル車の販売を続けたVW社の思惑などまで踏まえて今回の不正の背景やVW社の焦りを読み解いています。

 2位の「テスラEVで死亡事故、識者に聞く---「自動運転が起こしたという認識は間違い」」は、米テスラの電気自動車が「自動運転」機能の利用中に起こした2016年5月の死亡事故に関する解説です。自動運転に関する事業開発などを手掛けるインテル 事業企画・政策推進ダイレクター 兼 名古屋大学 客員准教授の野辺継男氏に話を聞いています。

 野辺氏は事故の原因や背景を分かりやすく解説しつつ、前方に突然現れたトレーラーを、車載カメラが認識できず緊急ブレーキが作動しなかったというテスラ社の見解を紹介します。また、ドライバーが本来、自動運転ではないこの機能を、そのように誤解・過信した可能性を示唆し、この事故自体を「自動走行中の事故」と見なすべきではないと説明しています。

 このほかにも今回のランキングでは自動車関連の事故や事件に関する話題が多数ランクインしました。7位の「不可解な技術的説明、スズキに立ち入り検査を実施すべし」は、三菱自動車の燃費測定の不正に引き続いて発覚したスズキの燃費測定不正の説明に関する疑問を、モノづくり経営研究所イマジン所長の日野三十四氏が述べています。13位の「三菱自動車の燃費不正、国交省の職責を問う」は、その三菱自動車の燃費測定不正を監督しきれなかった国交省の姿勢を糺しています。

スキルアップ
1 なぜVW社は排出ガス不正問題を起こしたのか?
2 テスラEVで死亡事故、識者に聞く---「自動運転が起こしたという認識は間違い」
3 優秀と言われる設計者が押さえている品質手法とは何か?
4 エンジンはなくなるのか?---「ほぼゼロにする」というトヨタ発表の真意
5 構造用接着剤から見えるBMW社の戦略---低燃費競争のカギはHEVか接着剤か
6 トラブル発生、トヨタはどう対応する?---「QC七つ道具」と「新QC七つ道具」が大切な理由
7 不可解な技術的説明、スズキに立ち入り検査を実施すべし
8 日本企業が知らないトヨタ生産方式の本質---改善と成長が続く理由
9 「知財は大切」は嘘である
10 テスラEVでまた事故、喫緊の課題は「機能告知の徹底」
11 なぜ?を繰り返しても不具合は減らない---「なぜなぜ分析」の本質
12 使えるロードマップと使えないロードマップ
13 三菱自動車の燃費不正、国交省の職責を問う
14 E検定 ~電気・電子系技術検定試験~
15 テスラEVで死亡事故、識者に聞く---「これは運転支援システムである」
16 トヨタはSQCで「ばらつき」を制する
17 本当の「設計力」を備えていますか?---デンソーで鍛えられた設計の極意
18 技術と知財で勝る日本が世界でなぜ勝てないのか
19 車載システムの品質で中国に劣る例も--- Automotive SPICE対応
20 低コスト設計の切り札、「コストバランス法」とは何か?---競合製品の弱点を突く設計分析も可能に