エーピーエスリサーチの若林一民氏
エーピーエスリサーチの若林一民氏
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 炭素繊維強化樹脂(CFRP)を採用したボディーの軽量化に力を入れるドイツの自動車メーカーと、ハイブリッド車(HEV)に注力する日本の自動車メーカー。これまでの両者の動きは対照的だが、今後の低燃費競争は軽量化ボディーとパワートレーンの電動化を掛け合わせた競争になる。

 ここで、「このままでは日本の自動車メーカーはドイツの自動車メーカーの後塵を拝する可能性がある」と警鐘を鳴らすのが、エーピーエスリサーチの若林一民氏だ。「技術者塾」において「異種材料の接着と、接着設計&接着評価の考え方─クルマの軽量化を支える接着技術─」の講座を持つ同氏に、軽量化ボディーに必須の構造用接着剤から見えるドイツの自動車メーカーの戦略などを聞いた。(聞き手は近岡 裕)

──自動車技術の取材をしていると「日本メーカーは接着剤の使いこなしで欧州メーカーに遅れている」という話を聞くことがあります。どういうことでしょうか。

若林氏:「構造用接着剤」に関する指摘です。構造用接着剤とは、強度や耐久性を要する部材に使う接着剤のこと。要は、「欧州の自動車メーカーは自動車のボディーに構造用接着剤を積極的に使っているのに対し、日本の自動車メーカーは消極的だ」という指摘です。ここでは欧州と言っていますが、中でも先陣を切っているのはドイツです。

 私が海外のネットワークから得た情報によれば、ドイツの自動車メーカーが構造用接着剤を積極的に活用している背景には、しかるべき戦略があります。